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「シャツ!忘れるとこだったー」 独り言を零しながら自分のロッカーから紙袋を取り出す。雪崩が起きることを認識しているのか、少しだけ開けて扉を押さえるように取り出す姿に呆れてしまう。 「なにそれ」 「練習T〜!可愛い子ちゃん達の喉から手が出るほど欲しがるイケメン律くんの練習T〜」 「ふーん。まあ部活頑張れよ」 部活のことはよく分からないので、適当に相槌を打つ。 「返事テキトー!さすが智ちゃん、俺の扱い分かってる〜。んじゃ俺体育館戻るね。おつかれ〜」 教室の扉に手をかけながら投げキッスしてきたので、俺はいつものように顔を歪めて撃ち落とす。 律はTシャツの入った紙袋を手に持って颯爽と走って行った。おい、廊下は走るなよ。…て、そういや俺も今日走ったか。 バッシュのまま来ていたのか床を蹴る律のシューズの音を耳にしながら、俺も教室を後にする。 数分前までのもやもやが嘘のように晴れ渡って爽快な気分だ。まあ誤解が解けたのが一番の要因だな! 律は基本いい奴だし、親友である俺のことを分かってくれてる。変に不安を感じるほどのことでも無かったのかもしれない。信じてなかったのは俺の方か? サッパリと晴れやかな気持ちのまま、俺は寮に向かって歩き出した。

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