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初めて迎える朝の恐慌

あの後俺は、アヒルのカナコちゃんを何事も無かったかのように風呂場の前に起き、そそくさと自分の机に戻った。 途中だった明日の予習に集中しよう。そうしよう、と織田が風呂から出てくるのを待っている間。俺は思った以上に疲れていたのか、気付くと机に突っ伏して眠ってしまってしまっていた。 目が覚めたのは早朝で、時計を見れば5時を少し回ったところ。外も室内もまだまだ薄暗い。 優しい誰かが肩から布団を掛けてくれている訳もなく、薄ら寒さを感じてクシュンとくしゃみをした。 織田は多分二段ベッドの上で寝ていると思う。俺が一段目を使っているから、必然的に織田は上になる。 しかし下からはよく見えないし、わざわざ覗くのも面倒なので俺は音を立てないように急いで風呂場に向かった。 机で寝ていたからか足は浮腫むし全身バキバキだ。 シャワーを浴びて髪と体を洗い、時間も早いし俺は温かい湯に浸かることにした。 「ふい~、朝風呂とか久々…」 独り呟いて視線を向けた先で、引き込まれるように映ったのは――またもや、黄色。 「マジか…」 なんでカナコちゃん… それは風呂場に置き去りにされたアヒルのカナコちゃんだった。 「あいつ、本当にカナコちゃんのこと大切にしてんのか…?」 名前まで付けておきながら、投げつけられるわ置き去りにされるわで酷い扱いである。 心なしか寂しそうな表情をしているように見えたカナコちゃんが可哀想になって、そっとカナコちゃんを手に取った。 「男子高校生がアヒルのオモチャと入浴って…今誰かに見られたら誤解されんの待ったなしだな」 見目麗しい織田でさえ引いたのだから、平々凡々な俺なんてドン引きされるに違いない。 まあ、誰かに見られたとしても今は織田くらいしか居ないんだけど。 俺は手の中にあるカナコちゃんを手遊びをするみたいに、クルクルと上下に回してみた。 「………ん?」

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