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02
ふとカナコちゃんのお腹に何か文字が書かれているのに気付く。
少し消えかけてはいるが、油性マジックで書かれたであろうそれは…
「と…も……て、俺?」
何故かそこには平仮名で辿々しく“とも”と書かれていた。
織田はオダレイヤだから、織田の名前じゃない。とも、と言えば俺の名前であるが…どうして織田の私物にともと書かれたものがあるんだろう。
もちろん末永智では無く「とも」という同じ名前の子が書いたものだと考えるのが妥当だ。
なのに俺は、何故だか見てはいけないものを見てしまった気がして、急いでカナコちゃんを元あった場所に置き風呂場を後にした。
ーーー
チン、と小気味良い音をさせてトースターがパンの焼き上がりを告げる。
「はいはい~」
俺は母さんがよく言っていた口癖を口にしながら、トースターから小麦色に焼けた食パンを2枚取り出した。
それを用意しておいた2枚の皿に並べ、フライパンから焼いたウインナーとスクランブルエッグを取り分ける。
冷蔵庫を開けて実家から送られて来た俺の大好物であるトマトを添えたら、朝ご飯の完成だ。
「…お人好しっつーか、馬鹿?」
俺はキッチンに並べてある2人分の朝食を見ながら自嘲地味に呟いた。
微妙な時間に起きてしまった俺は寝ることもできず朝ご飯を作ることにしたのだが、なんとまあ気付けば2人分を用意していた。
もちろん暇だから、というのもある。
しかし作ったからと言って食べるとも限らないし、そもそも出会った時から不遜な態度を取られ(もちろん俺も悪かった)、ロッカーに押し付けられ(あれは理解できない)、カナコちゃんを投げ付けられた(ことはそこまで気にしてない)ような奴に朝食を作るなんて我ながら理解に苦しむ。
とは言っても、だ。やはり1年間ギクシャクして過ごすのは嫌だし、お互いの為にならない。一応昨日織田の趣味をギャーギャー言って申し訳なかったな…と言えば癪だが、そんな気持ちも少しあって織田の分も用意する事にしたのだ。
まあ作ったと言っても別に手ぇ込んでないし?焼いただけだし、適当だし?なんならついでに作ったような軽いノリだし?と自分に言い聞かせて、よし!と気持ちを切り替えた。
自分の分は自分の机に持って行き、織田の分はソファーの前の机に置く。
織田は食べるか分からないので、冷蔵庫から自分の分のヨーグルトと牛乳を取り出し牛乳をコップに注いでいると、突然織田のベッドの方からけたたましいアラームが鳴り出した。
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