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突然のことに咄嗟の判断が出来ず、受け身を取ることもできないまま衝撃で体が床に沈んだ。 「い゛ッ…つぅ…!!!」 後から来る痛みに眉をしかめるが、痛みを本格的に意識する前に、俺に馬乗りになってきた織田の重さに恐怖を感じた。 また殴られる――!!? 本能的に頭を守ってみたが、何故か痛みは襲って来ない。それどころか織田は覆いかぶさるように上体を下げてきて、俺の体をふわりと抱き締めた。 「………え…?」 「……と…も…」 織田が俺を呼ぶ。 アンタ、としか呼ばないその口が苦しそうに、切なそうに、俺の名を呼んだ。 訳のわからない展開に困惑して一瞬思考が停止した。 いきなり殴られたかと思えば抱き締められ、名を呼ばれた。それも強気な織田からは想像出来ないような弱々しい響きだ。 俺は声を出すことも出来ず顔だけを上げたまま、織田の強く抱き締めて来る力に固まってしまった。 「っわ…!」 暫くそうしていると突然織田の体がグンッと重くなり、体重を支え切れず後頭部を軽く打つ。 今度は何だ!?と身構えると体の上から、スー、スーと規則正しい寝息が聞こえてくるではないか。 「………寝んのかよ」 さすがに苛立ちを感じ文句を言うが、織田は起きる気配さえ無かった。 なんだよ。意味分かんねえ。 もしかして、今までのは寝惚けてたってことか? だとしたら俺可哀想すぎじゃない…? 「んぉー…痛い。ありえない。信じられない」 織田の寝起きの悪さに、カナコちゃんとの入浴シーン以上にドン引きしながら何とか織田の下から這い出る。 ヒリヒリと痛む頬を冷やすため、棚から氷嚢を取り出し氷水を入れた。 「~~っ、こいつ本気で殴るんだもんな…イテッ」 口の中を切ったらしく舌で探っていると痛みが走った。 つーか、一瞬のことでちゃんと見れなかったけど、多分あいつグーで殴りやがったよな?グーで殴られたことなんて初めてなんですけど!なんなら普通にパーで殴られたこともねえよ。 イライラしながら氷嚢を頬に当てる。頬から伝わる冷たさに痛みが和らいでいく。 熱が引いていくのにつれて、気持ちの方もなんとか落ち着いてきた。

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