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織田が含みのあるもの言い方で呟いて、律から目を離して俺を見た。
俺より織田の方が若干背が高い。若干な!それになんだよ、という意味を込めて見返す。
やはり近い。
近いからこそ織田の肌のキメ細かさがよく分かった。律も綺麗な肌をしているが、織田のはまた違ったまるで陶器で作った作り物のようなさらさらな肌だ。シルク肌ってやつ?
つい触れてしまいたくなるような透明感。同時に触れてしまえば消えてしまいそうな儚さに、ひと時の間呼吸をするのを忘れてしまう。
蜂蜜を濃くしたような美しい両目は、ただ真っ直ぐに俺を見つめていた。
「な……や、ほんとなんだよ。言いたいことあんなら言えよ」
思わず目を逸らしそうになったが、野生動物さながら逸らしたら負けな気がして俺も目を合わせたまま強めに言う。
不意に頬に手が触れた。
俺の事を好き好んで触れてくる奴なんて律くらいなものだろうと思っていたのに、目の前にいるのは織田だ。
正直あり得ない。夢か?俺は夢を見ているのか?だとしたらどこからが夢だ。
織田は俺の頬に手の平を添え、親指が口端に触れる。
少し触れただけだが、出来立ての青アザはチクリと痛んだ。
「……い、て」
そういえば朝も律にこうやって触られたな。
待てよ…?
その流れで行くと、俺また青アザ押されるやつじゃね!?やだやだ!もう無理!絶対嫌だ!
でもここでまた朝のように騒ぐと、フリだなんだと訳のわからないことを言われ痛い思いをしそうで上手く言葉が出てこない。
色々考えていると先に織田が口を開いた。
「これ、ほんとに俺がやったのか?」
「…お、おう。お前だよ。ほんとなんにも覚えてないんだな」
「似合ってるじゃん」
「…………嫌味か?」
「ああ」
フッと嫌味でも嫌がらせでもない自然な笑みを向けられ、不可抗力でドキッとした。
こ、こいつの普通の笑顔の威力凄まじいな。これ以上見ていては危険な気がして、力任せに織田の手を振り払おうとした時。
「智ちゃん!玲哉!」
体育館の中から律の呼ぶ声が聞こえた。
試合の練習に一区切りついたのか、バスケ部員がそれぞれ水分補給をしにバラバラに散る中、律だけが俺たちの元に走ってくる。
同時に織田の手もスルリと、頬から離れた。
ホッ…
「どーしたのー?2人で来るなんて。なんかあった?」
キラキラ光る汗を滴らせながら、律が爽やかな笑顔を向けて来る。汗をかいているというのに、嫌な臭いは一つもして来ない。普段から汗をかいてる奴って汗臭低めなんだろうか。
「律!おつかれ。なんかあったっていうか、ハッシー先生が織田に校内の案内してやれって。部活してるとこ見たいって言うから連れてきた」
「え!?玲哉が俺を見たいって!?」
「いや、そこまで言ってないけど…」
「そうだ、浅倉。お前を見にきた」
「え!?」
まさかの織田のデレ発動。
なんで!一体なにがあった。
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