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「バスケ部、楽しそうだな」
「…織田。もしかしてバスケ部に入ろうとか考えてる?」
「考えてる」
「マジー?玲哉経験者?」
「一応な。前の学校はバスケ部だった」
「ウッソ!ちょうどいいじゃん!おいでおいで~、うち結構強豪よ」
「知ってる、橋本に聞いた。寮生活初めてだから、やってけるかどうかと思ったけど…やっぱ見ると駄目だな。やりたくなる」
「やろうよ!練習まあまあキツイけど経験者なら余裕だって~」
織田の言葉に律が心底嬉しそうに笑う。
あれ?尻尾が見える…引き千切れそうな程ぶんぶん振ってる……ダメだ幻覚が。
大型犬が、高飛車な猫に尻尾を振ってる様子が思い浮かんで思わず吹き出しそうになった。
ちょっとニヤついてしまっていたのか、織田が気付いて「なに?」と冷たく聞いてくる。
「いやぁ?なんでも。じゃあ、織田はバスケ部の様子もうちょっと見ていけば?俺は夕飯の用意があるからそろそろ帰るわ」
「夕飯の用意って…母親かよ」
「うるせーな、お前も少しは自炊しろよ。夜食わねえとか女子かよ」
昨日言えなかったことをここぞとばかりに言ってやる。織田はイラッとした様子で俺に向き直った。やべっ。
「喧嘩売ってんの?」
「そんな暇ねーよ!んじゃ、律あとはよろしく!」
「あっ、智ちゃん」
「?」
「今日俺、オムライス食べたい~」
「…あー、卵あったらな!」
「やった!」
嬉しそうに笑う律に笑い返して俺はそそくさとその場をあとにした。
危ない、危ない。
織田にキレられるのは勘弁願いたい。
それにしてもオムライスかー。久々だな。鶏肉は冷凍してたやつがあるし、特に買わないといけないもんは無いかな……って、ん?てことは今日も部屋に来るってことか?
あいつ玲哉が同室って分かった途端に来る頻度上がったな。ゾッコンかよ…
俺単品の時でも、まあまあな高頻度で遊びに来ていたが毎日じゃ無かった。これからはもしや毎日来るのでは…?
それでもし織田と付き合うようなことになったら、部屋であんなことやこんなことを繰り広げるってこと?俺、迂闊に部屋に入れないじゃん。
自分の部屋に入り辛くなる未来のことを考えて俺は少し気が重くなった。
「はー…彼女欲しー」
男子校、しかも全寮制では滅多なことでは叶いそうにないボソリと呟いた願望は、グラウンドに響き渡ったホイッスルの音にかき消されていった。
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