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07
「いやぁ、俺も訳わかんないんだけど、多分昨日校内の案内してたのが誤解されたっぽい。あいつ無駄に距離が近いじゃん。それでだと思う」
「……今日の朝も一緒に来てたんだって?そんな仲良かったっけ?」
律の表情が少し暗い。
そこまでもう聞いたのか。というか、やっぱり一緒に登校したのは不味かったか…
多分、律は嫉妬してる。
律が誰かに嫉妬してるのなんて初めて見た。つまりそれだけ織田のことが本気、ってことだよな。
「…顔暗いぞ!朝はちょうどタイミングが一緒だったってだけで、変な意味なんか全くないよ。つか俺たちが仲良くないの知ってるだろ?」
「……そうかなあ」
いつも明るく爽やかな律の暗い表情に胸がざわざわする。
そりゃそうだよな。自分の恋人が友達と噂が立ってるなんて俺だったら耐えられない。考えが浅かったんだ。
俺は視線の下がって行く親友の顔を覗き込む。
律は視界の中に現れた俺にビックリした表情をしたが、目を逸らすことはしなかった。
「律…お前が不安になるなら、俺もう織田とは一緒に登校しないよ?2人で歩いてるのも律は嫌、なんだろ?」
「…………嫌」
ボソリ、と呟かれた律の言葉に大きく頷いた。
「分かった。今日のはほんとにたまたまだったんだ。だからもうそんな顔するな」
「…智ちゃん…」
「それにしたって、お前マジで好きなんだな。律のそんな顔初めて見たよ」
「…うん、だいすき」
暗かった表情が消え、俺に向かって蕩けるような笑顔を作る。
「…!」
自分に言われたわけじゃないのに、自分に言われたと錯覚してしまうような笑顔にドキッとした。
「そ、そっか…良かったじゃん。そんな好きな人と付き合えて。仲良くしろよ」
「んー」
律はいつものように首を傾げながらヘラっと笑う。
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