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その日一日宣言通りに意識して織田と2人にならないようにしてみたが、そもそも学校にいる間は3人で過ごす時間が多く(俺がボッチになるから)、なんてことはなかった。 織田も俺と歩きたいわけではなく、俺の悪口を聞きたいだけだから律がいるときは俺の傍になんて近寄って来ない。もちろん俺だってわざわざ織田と比較されながら歩きたくないし、むしろ遠慮したいので丁度良い。 そんな訳で特に何事もなく1日の授業が終わると、律は織田とともに部活に行ってしまった。昨日言っていた通り入部届けを出しに行くらしい。 あいつがバスケ部に入るなんて意外だよな。部活で汗を流す天使なんて、さぞ美しかろう。 ――違う、間違えた。 あんな口より先に手が出るような暴力的でかつ、口の悪い男が天使なわけない。あんな天使いてたまるか! 「……帰ろ」 1人になった俺はカバンを持って教室を後にした。 「ただいまー…て誰もいないけどねー」 1人虚しいことを呟いた俺が部屋に戻ってまずしたこと。掃除だ。 織田が来てからバタバタしていて部屋の掃除ができていなかった。部屋着に着替え腕を捲って窓を開ける。 部屋に備え付けのスマートなコードレス掃除機を手に取りスイッチをオンにした。 広い部屋ではないのであっという間に掃除機をかけ終わり、ついでにベランダに出て外に落ちているゴミも吸う。 そのあと軽く拭き掃除もして、俺は風呂場に向かった。 乳白色のバスタブを洗剤をかけスポンジで磨きながらそういえば…と、ある事を思い出してしまった。 「カナコちゃん…居ねーな…」 きょろきょろと辺りを見渡すが、やはり黄色い塊は風呂場には無かった。 昨日シャワーを浴びた時には気付かなかったから既に昨日から無かったんだと思う。置き去りにされてたのは1日だけだったのか。 語弊があるかも知れないが、あれから織田の入浴シーンを覗いていないし、風呂場に行く姿をわざわざジッと見たりしていないから、カナコちゃんを連れて入浴しているのかは謎だ。 でも多分、仲良く入浴している気がするのは俺だけ? なにせ可愛いものなんて身に付けず、どちらかというとヒョウ柄パンツを履いちゃうようなワイルドで男らしい織田だ。それがあんなキュートで名前まで付けたおもちゃのアヒルを所持しているなんて…きっと相当大事なものに違いない。結構年季が入っているようにも見えたし。 「とも、ってアレなんだっただろ。俺なわけないと思うけど、なーんか引っかかるんだよな…」

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