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「え?…や、せっかく付き合いだしたのにバスケ部の奴らに取られて寂しいのかなと思って」
思ったままを口にすると織田は味噌汁を啜りながら、こちらを上目遣いで見る。
あんま和食とか似合わないな、こいつ。
「なんか勘違いしてるみたいだけど、俺付き合ってもそんなベタベタしねえから。依存もしねえし束縛も執着もしない」
「そうなの?」
「ライトな関係がちょうどいいだろ。束縛とか縛られんのマジ勘弁して欲しい」
「……ふーん…」
でもきっと織田と付き合うと相手は束縛したくなるんじゃないだろうか。
律だって束縛とは行かなくても俺なんかに嫉妬したくらいだ。
こんな美人をちゃんと捕まえとけるのか、俺だったら不安になる――…
と、そこまで考えてハッと我に返った。
ままま待て待て待て!俺なに自分に置き換えてんの!?万に一つもありえねえから!
俺は女の子が好きなんだ…!ちょっと気の強そうなツンデレな女の子が好きなんだよ…女の子が!!
自分の考えに鳥肌が立つ。
織田はどうも見た目が中性的だからやりづらい。これ以上危険な思想に走らないよう俺も晩御飯に手をつけることにした。
今日も相変わらず織田は美味しいも不味いも言わず、しかしあっという間に完食してくれた。
最後もきちんとゴチソウサマと手を合わせて自分の食べたものを流しに持っていく。出来る子だ。
「あ、そうだ。織田!」
「なに」
「今日俺、部屋の掃除したから今度お前よろしくな。んでした日にはカレンダーに印しといて。交互にやっていこうぜ」
「……りょーかい」
カレンダーをチラリと見た織田は素直に頷いてくれた。まあ文句言われたって、問答無用でやらせるけど。
流しから離れた織田は風呂場に近付きながら、未だ食事中の俺の方に顔を向ける。
「俺、先風呂行くけどソレ食べ終わったら流しに置いといて、洗うから」
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