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05
グイと腕を引っ張られて引き気味の腰が浮く。どこにそんな力が眠っているのか問いただしたいくらいの馬鹿力。織田は俺の腕を掴んだまま目の前の扉を開けた。
「待って待って!俺!忘れもんした!」
「なにを」
「えっ、えっと……………あ!」
廊下に出て往生際悪いとは思いつつ何とか別々に行く道はないかとウダウダ言っていると、廊下の向こう側から背の高い生徒が歩いてきているのに気付いた。
あんな歩いてるだけで爽やかで目立つ奴、俺の知ってる限り――
「律…!」
律しかいない。
朝練に行ったはずなのに、何故ここにいるのかは謎だが、助かった!
「律!おはよう!」
そう言いながら掴まれていた腕を勢い良く振り解くと、律の登場に気が逸れたのか今度は簡単に腕が離れた。
俺はそのまま律の元まで走り寄る。
「珍しいな、朝練の後にこっち来るなんて」
「うん、早く終わって暇だったから」
短く返すと律は俺から離れて、扉の前にいた織田の元に歩いて行く。
……ん?
「おはよー、玲哉」
「おはよ。朝練行かなくて悪かった」
「んーん、いいよ。強制じゃないし」
「電話も」
「電話ね~。何回も切られてビックリしたよ」
俺の時とは違って穏やかに話す織田に、律も笑顔を携えたままにこやかに話している。見る限りいつも通りの2人だし、別に普通だ。
だけど俺は2人から離れた場所で、先程感じた違和感に胸をざわつかせていた。
「なに揉めてたの?」
「あー…ちょっとな」
2人がこちらに歩いて来る。織田は律と言葉を交わしながら、言うことを聞かなかった俺のことを綺麗な顔で睨んできた。
やだなー、もう絶対あとでなんか言われるよ…
でもそれよりも。
今気になるのはこっちの方だ。
「あの、律…」
「?どーしたの、智ちゃん。行かないの?」
「行く、けど…」
横に並んだ時に思わず律の袖を掴んだ。
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