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「な、なんでしょうか…?」 「いやー、お前も見かけによらずやり手なんだなーと思って」 「…なんのことです?」 意味がわからない。 首を傾げるとハッシー先生はチラッと俺の肩越しに窓際の辺りに目をやってから、もう一度こちらを見た。 「お前、織田と付き合ってるんだろ?めちゃめちゃ手ぇだすの早いな」 「は!?…あ、いや、先生。それ誤解です!俺は織田と付き合ってなんかないです。というかどこからそれを…?」 「違うのか?職員室でもその話題で持ちきりだったぞ。…でも違うなら良かった。俺にもまだチャンスがあるってことだな」 「チャ…」 うわ、いきなり男の顔すんな!気持ち悪!つーか狙っちゃ駄目だろ。犯罪だぞ。 ハッシー先生のギラついた男の顔を目撃してしまって、物理的に数センチ引く。 「いやいや駄目ですよ先生。チャンスなんてないです。あいつはもう律と付き合ってるんで」 「律?…浅倉律か」 心底残念そうな顔をするハッシー先生。 俺、この先生そんなに嫌いじゃなかったけど本気で生徒である織田を狙ってたんならちょっと引くわ。というか絶賛ドン引き中だわ。 「まあ、でもあれだ。浅倉なら諦めもつくな。んじゃ、球技大会の件よろしくー」 そう言うとハッシー先生はさっさと教室を出て行ってしまった。俺だと納得いかないのに、律だとアッサリ納得するんだな。気持ちは分かるが微妙に腹が立つ。つか諦めって…本気で狙ってたんかい。 ゾゾゾ…と背筋が寒くなるのを感じて、美人過ぎるのも考えものだなと織田を不憫に思う。 「智ちゃん?ハッシーなんて?」 ドン引き顔でハッシー先生の去ったあとを見ていたら、いつの間にか傍に来て居た律が俺の顔を覗き込んで来た。 「ハッシー先生…ホモだった…」 「?そんなの今さらじゃない?」 「しかも、織田を狙ってたっぽい」 「あー」 「あー、て!気をつけろよ」 「ハッシー先生より俺の方が魅力的でしょー」 「まあ、そりゃそうだけど…」 「………」 律が何かを言おうとしたのか口を開いたが、何も言わずに閉じると自分の席に戻ってしまう。 「?」 なんか最近こういうの多いな。 変な律だ。

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