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一瞬のうちに変わる顔付きに、驚いた。 同時に薫くんの前にあった洗濯機が洗濯の終了を知らせて、自分の使用していたものだったのか電子音に反応して薫くんがゆっくりと立ち上がる。 「使えないやつ…」 ボソリと呟かれた台詞。 女の子みたいな容姿から発せられたとは思えない低い声に薫くんを見上げると、汚いものでも見るかのような冷たい瞳で俺を見降ろしていた。 織田にもよく冷めた目をされるけど、あれとはまた違う、凄く嫌な気持ちになる目だ。 「キミが役に立たないことはよく分かったよ。…でもぼくはあんな顔だけのやつ認めない…絶対に」 酷く抑揚のない声を出した薫くんは、自分の洗濯物を手早く取り出すとこちらを振り返ることなく去って行く。 「………なんだ、あれ」 1人残された俺は呆然とするしかない。 認めないって…何をする気なんだろう。 俺は平凡野郎だったから、呼び出されて文句、罵倒を浴びせられる程度で済んでいたが、織田はどうだろう。 織田のような飛び抜けて顔の綺麗な奴がそれだけで済むだろうか。 ああいう奴らは集団でやって来るから厄介なんだ。 閉鎖的な空間でターゲットにされる顔が良く可愛い奴らは、下品な苛めを受けたりもするらしい。実際見たわけじゃないけどこの学校ならあり得そうで寒気がする。 男は男の中で磨かれる、なんて上辺だけだと思う時がある。 磨かれればいいが、潰れてしまう子だっていっぱいいるんじゃないか、と陰湿な話を聞く度にと考えてしまう。 ――…ー織田は、大丈夫だろうか。 もちろん潰されるようなやわなメンタルはしてないと思うし、何かされると決まったわけではない。 なのに俺は、薫くんの冷酷なまでの表情を思い出して、どうしようもなく胸がザワザワするのを感じていた。

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