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06
あの強気で俺に対して鬼のようにキツく当たる織田が女役をしているのを想像……できなくもないが、正直あまりしたくない。
どちらかというと織田もガンガン攻めそうな性格してるし。
でも顔だけなら中性的で絵画のように綺麗だから、きっと絵にはなると思う。
「……」
絵になるなんて思ってしまったからだろうか。
想像力とは恐ろしいもので、一瞬、律の下で律を受け入れる織田を思い浮かべてしまった。織田の端整な顔が淫らに歪む。
「わーー!!やだやだ!何考えてんだ!ヒーー俺のバカ!!」
やばい、欲求不満なのかな…
数秒前に想像したくない、とか抜かしてたのにこのザマだ。ついに俺にも男子校の魔の手が忍び寄ってきたのか…?
己の思春期真っ盛りな想像力に自己嫌悪していると、タイミング悪く玄関から物音がした。
「げ」
ガチャっと開く扉に目をやると、現在俺の中で話題の織田と、その後ろから律が入って来るのが見える。
何故、2人でー!?
俺は咄嗟に持っていた携帯を手離し、壁際に体を向けて寝たフリを決め込んだ。
不埒な想像をしてしまった後に本人達と顔を合わせるのが気まずかったから、というしょうもない理由である。
「あれ…智ちゃん寝てる?早くない?」
律が気を遣ってか小さな声で囁くのが聞こえた。
確かにまだ21時過ぎたばっかだしな。織田のことをお爺ちゃんだと揶揄したばかりだというのに、これでは人のことを言えない。
「起こすか?」
織田の淡々とした声。
起こすのはやめてくれ。
「いや、いいよ。可哀想だし」
「そう?」
織田の俺に対する適当さが浮き彫りになる会話だな、これ。そう?じゃねーし。どう考えても可哀想でしかないだろ。
微かに床を踏む音が聞こえ、僅かだが嗅ぎ慣れた清潔感のある優しい香りが鼻腔を包み込む。この香りは律がいつも使ってる香水だ。
俺のベッドの側まで来たようで、手が髪に触れた。
「……ほんとうに、寝てるの?」
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