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「で、魚は?」 「織田くん…君ね、さっきから口を開けばサカナサカナって…もちろん買うよ?でもお魚コーナーはまだ先なの。順番に見てんだから大人しくしとけ!」 「もう面倒臭いから魚だけ選ばせて帰らせろ。金は後で請求で」 「なに楽しようとしてんだお前は!…あーあ今日の夜、鮭のムニエルでも作ろうかなって思ってたのに。やっぱやめようかな…」 ワザとらしくちょっとオシャレな単語を呟くと織田の体が止まって、舌打ちと共に俺が持っていたカゴを奪い取られた。 ほう…持ってくれるってことは最後まで居てやる、っていう意思表示として受け取ればいいんだな? うむ、素直でよろしい。 日曜日、俺たちは前から言っていた通り食材の買い出しに来ていた。 律は時間の直前になって【ごめん!先輩に捕まった!先に行っとくか、ちょっと待ってて】と連絡が入ったので、俺は先に行っとくと返事をして、2人で寮の一階にある小規模なスーパーで野菜ゾーンに突入中だ。 携帯のメモアプリを開いて買い物メモを見ながらお目当のものを手に取っていく。 それを横で何も言わずに見ていた織田だったが、不意に持っていたカゴが俺の足に当たった。 いや、多分当てた、だ。 しかも丁度角のとこ。 「いってーな、なんだよ」 「アンタってさ」 織田の言葉を聞きながら行儀が悪いと思いつつカゴを足で押し返す。ついでに織田の言う「アンタってさ」に軽い恐怖を覚えて身構える。 「ほんと主婦みたいだな」 「…何を言うかと思えば。逆にこれだけ家庭レベルが高けりゃ将来1人でもやってけるだろ」 「独り身でいる気満々かよ」 「違うわ。結婚するまでの間って意味だよ。むしろ俺は結婚願望超高いし」 今日はビーフストロガノフが食べたい気分だな…なんて呟くと、そんな面倒くさいもの作らないわよ!と言いながら仕事から帰って来たら食卓にビーフストロガノフが並んでいる、そんなツンデレで可愛い嫁が欲しい。 「へー。まあどうでもいいけど」 「でしょうね」 突っかかってくるんなら、正直もう少し俺に興味を持って欲しい。

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