95 / 166

球技大会と陰湿な思惑

渾身の力の限りを尽くして専用の球体を投げ合い、只ひたすらに敵を撃ち落とし全滅を目標とする恐怖のGAME。 もう足を洗ってから何年経つだろう…2年くらいか? うん、ドッチボールなんて久しぶりだ。 早々にボールを当てられ外野に放たれた俺は、あまりの暇さにドッチボールを如何に格好良く言えるかを真剣に考えていた。 毎年5月に開催される全校生徒対抗の球技大会の今日は雨も降らずに晴れたいい天気だ。これっぽっちも思ってないけど敢えて言うなら、絶好のスポーツ日和ってやつだわ! 競技別で優勝したチームには寮内の食堂1ヶ月食べ放題チケットなるものが授与される。1ヶ月も食べ放題という超太っ腹なご褒美に食欲旺盛な男子高校生達は目の色を変えて挑んでいた。 そしてそれは、他よりルールが少なく誰でもできるパッと見、緩そうなドッチボールも例外ではない。 部活はフットボールしてますみたいな腕力のあるやつにボールが渡った瞬間の恐怖たるや…お願いだから痛くしないで、というやつである。 全ての競技がトーナメント式で進んでいくので、ドッチボールも勝てば勝つほど痛い目に合う。 もうはなから当てることを考えてない俺は、どれだけ痛い思いをしないかということしか考えてなかった。 なんで俺ドッチボールなんかにしたんだろ… 食堂1ヶ月食べ放題は魅力的だが、悲しいかな。俺、自炊派だし。正直皆さん大人しく降参しましょうと声を大にして言いたいくらいだ。 負けることは恥ずかしくない。 負けを知って人は強くなるのです。 そうは言っても、そんなこと流石に口には出せないのでひたすらドッチボールを厨二っぽく言い換えて時間を潰していたわけだが、 なんと! 俺のもう痛い目に遭いたくない願望が天に通じたのか、俺たちのクラスは初戦敗退という素晴らしい結果を叩き出した。 「わー、くやしいなあ」 悔しがるクラスメイト達に合わせて俺もなるべく気持ちを込めて呟いてみる。 食べ放題があああ!と叫んで肩を抱き合って悔しがれる友達がいないのが残念だ。はは。 ちなみに敗者復活戦なんて弱きものに手を差し伸べるようなものは存在しない。 負けた奴らは同じクラスの他の試合応援しろ、ということだろう。観客がいる方が盛り上がるしな。

ともだちにシェアしよう!