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07
問題の試合相手は、俺たちからすれば先輩にあたる3年生だった。
皆一様に体格が良く俺なんて突進されたら吹き飛ぶ自信があるような相手だったが、トーナメント方式なのでお互い勝ち進めばやりづらい3年生とも対戦することは避けられない。ただそれだけならまだ良かったのだ。
「あれ、明らかに当ててんじゃねえか!」
可愛い系の奴らが非難していたように、対戦相手の3年生は審判から見えないように律たちに幾度となく接触を繰り返していたのだ。
1人だと言うのに思わず声に出るほどカッとなってしまったが、接触は反則の筈。
しかも律たち、というか何故かターゲットにされているのか織田への接触が嫌に目立つ。
審判はこの競技に一番詳しいバスケ部員でおかしいことは気付いているのか何度かホイッスルを鳴らして注意を促すが、上下関係の激しい男子校のガラの悪そうな最高学年から「やってませーん」「勘違いでーす」と言われてしまえば相当強い精神力が無いとそれ以上言い募れず審判も軽く涙目だ。
体もあまり大きく見えないしもしかしたら1年生なのかも知れない。公式試合ならまだしも校内の球技大会で、こんな訳のわからない試合の審判をさせられて君も可哀想にな…
「あっ、また!」
声変わりのしてないような声が一斉に悲鳴を上げた。
同情の意味を込めて審判を見ていたがいつの間にか再び織田に接触が起きたらしい。
当たりが強かったのか、いくら見た目より筋肉が付いている織田とはいっても基本的に細い体だ。無様に倒れるようなことは無かったが衝撃に耐えきれず床に両膝つく。さすがにこれには審判が一際大きな笛を鳴らしすぐに律が駆け寄ったが、その手を無視して織田は立ち上がり忌々しそうに3年生の元へ歩いて行く。
え…おい、マジか。相手3年だぞ、まさか織田の得意な暴言を吐き散らすつもりか?気持ちは分かるけど、ちょっと落ち着けよお前!
普段の織田を知っているだけに内心ヒヤヒヤして見ていると、3年生の前で立ち止まった織田は何かを口にする。
苛立ちを隠しもしない表情から想像するに多分「なんのつもりだ?ふざけんな。伸すぞコラ」かな。最後の言葉は俺の勝手な予想。
「ーーー」
それに対してやはり何を言っているのかは聞こえないが、当の3年生達は嫌らしくニヤニヤ笑いながら織田に言葉を返していた。
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