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「おい、アンタ」 「ん!?」 先程までの不機嫌面が嘘のように楽しそうな笑みを浮かべた織田が俺に向き直り、腕を掴んで手の平を上に向けさせられた。 「バトンタッチ」 「痛!?」 バチィンッと割と容赦無い力で手を叩かれ、足取り軽くあっという間に織田は体育館を出て行ってしまう。その後ろ姿に慌てたのはもちろん俺だ。 「え!ちょっと待てって!どこ行く気だよ!?」 「智ちゃん?」 追い掛けようかどうしようか迷っているとタイミング良く律が戻ってきた。あわあわと慌てる俺を見て不思議そうに首を傾げる。 「お、織田が、織田が行っちゃった!」 「ほんとだ、どこ行ったんだろ?保健室かな。…でも大丈夫だよ~。審判に選手交替の許可貰ってきたから。むしろちょうど良かったかも」 「選手交替?」 「うん。球技大会だし、明らかに向こう接触多いし。大怪我しても駄目だから玲哉にはこの試合下がって貰うことにした」 「マジか!…なら良かった」 そういうことであれば安心だが、俺は織田のあの悪魔の笑みが気になる。俺の予想が正しければ薫くんの元へ行ったような気がするんだけど。大丈夫かな、薫くん。 もちろん織田じゃなくてね。 「てか玲哉なにも言わずに出てったの?」 「いや、なんか言ってたよ…何だっけ。あ!バトンタッチっつってたな」 「バトンタッチ?智ちゃんと?智ちゃんがこの試合出るってこと?」 「いやいや無理だろ。俺バスケ選択してねーし」 「でもここにいるってことはドッチもう負けたんでしょ?」 織田の行方に不安を感じていると、律がなんだか嬉しそうに聞いてきた。だんだんと嫌な予感しかしてこなくなりジリ…と律から距離を取る。 「そりゃ…まあ…初戦敗退したけど…バスケ他にも選択してた奴ら居たろ?」 「えー、でも玲哉直々に選手交替希望されたんだから…智ちゃん!楽しもっか!」 「やだよ!?」 「ハーフタイム終了です!3Eと2Bはコートに戻ってください!」 審判の声に、律が逃げ出そうとしていた俺の腕をガシッと掴む。 「ひいっ」 「よぉーし、頑張って勝つぞー!オー!」 律の元気な声にズルズルと引き摺られて俺は泣きそうになりながらコートインすることになった。 何故だ…意味がわからない。 俺がわざわざドッチを選んだ意味を聞いてはくれないのですか…? こんなことなら織田の方を追い掛けときゃ良かった。

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