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「この間会ったんだよ。お前のことまだ好きみたいだったぞ」
「マジー?もしかしてヨリ戻したいって言ってた?」
「その通り。よく分かったな」
「なんか最近そういう子多いんだよね。でもそれがなんで智ちゃんに?関わりないよね?てゆかこの前っていつ?」
お、おお?なんかすごい質問責めしてくるな。
自分から話題を出しておきながら少したじろいだ。
「ほんと数日前だよ。洗濯機回してたらバッタリ。…て、っんなことはどうでもいいんだって!それよりあいつ、織田のこと逆恨みしてそうな感じでさ…ちよっと律から言ってやってくんない?」
俺の恋人に手を出したら許さない、とか。臭すぎだろうか。
「それは別にいいけど…俺が口出したら火に油を注ぐようなもんだと思うよ?」
「…マジ?」
「多分。ていうか、あの子そんなこと言ってたんだ~、なんか小狡そうなとこあったもんねぇ。…うん、そっか。今度それとなく注意しとく」
「ホントか!」
体を前のめりにさせて律に顔を寄せた。
律に注意して貰えれば薫くんも少しは目を覚ますかも知れない。元恋人とヨリを戻せないと分かるのは悲しいかも知れないけど、それとこれとじゃ話は別だ。あんな他人を使って陥れるようなやり方、例え子供染みた内容だったとしても正直最低だと思う。
「顔、近…。でも智ちゃんがそんな心配してるなんて意外~」
俺の急接近に驚きながら律が、俺のほっぺを親指と人差し指でギュッと摘まれる。
「んむ!?」
「やっぱりなんだかんだで仲いいんでしょ~?玲哉が俺の恋人なの忘れてない?妬いちゃうよ?」
とは言いながら律を見ても怒ってはいないようで笑顔のままだが、頬を挟む指が地味に痛い。たまらず両手で律の手を掴んで無理矢理引き離すと、離れる際に律のどちらかの指が、俺の唇を掠めた。
「仲良いとかそんなんじゃねーよ…!でもお前の恋人だから、俺も一応、気になるじゃん」
「えー、そーかなあ。俺は智ちゃんの恋人なんて気にならないよ」
「俺恋人いねーし」
「あっそうだった!ゴメンゴメン」
「おい」
ワザとらしく目の前で手を合わされ謝罪のポーズを取られるが、嫌味にしか聞こえない。喧嘩売ってんのかコラ。
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