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下を向いて歩いて来ているが、あれは多分薫くんだ。
姿が見えなくなったと思ったらこんなところにいたのか。織田は居ないみたいだけどどうしたんだろ。明らかに様子がおかしい。
織田の件もあるし声を掛けようと近寄ると、俺の目の前で大きく片側に揺れた。
壁際をとろとろ歩いていたものだから薫くんはそのまま壁に激突しそうになって、咄嗟に腕を差し伸べていた。
「あっ、ぶね!!……大丈夫か?」
片手だけでは支え切れず両手で薫くんの肩を支えると、やっと俺の存在に気付いたのかハッと顔を上げる。
「うわぁ!!?」
その瞬間、薫くんはまるで化け物にでも遭遇したかのように悲鳴をあげて、俺の腕を振り払った。何を考え込んでいたのか知らないが、そこまで驚かれるとさすがに傷付くし、何よりこっちがビックリする。
しかし薫くんの顔を見て俺はさらに驚いてしまった。
「……マジで何があったの…」
俺が言える台詞では無いかも知れないが、顔を上げた薫くんは目元を赤く潤ませていて…というかほぼ泣き顔で、泣きじゃくった後みたいに酷い顔だった。
生憎そっちの趣味を持ち合わせていないので驚いただけだが、きっと俺がドS認定してる律なら可愛いねと囁くに違いない。
「薫くん?」
「キミには関係ない!」
明らかに弱り切ったチワワに強く当たることができず、俺はなるべく優しく声を掛けようとしたのに、薫くんは非情にも俺の前から飛び退いてダッと走り去ってしまった。
何故か怒られて、1人取り残された俺。
「……えー…」
訳が分からなすぎて俺は少しの間その場に棒立ちだった。
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