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予想していなかった織田の動きに体が後ろに倒れ、いくらベッドの上とは言っても衝撃に一瞬息が詰まった。 視界がグルリと回り天井が写り込む視界。意味が分からずとにかく体勢を整えようと腕に力を込めるが、その前に織田の膝と思われる部分が俺の胸部を押さえ付けた。 「うっ、」 圧力がかかり眉を顰める。 真上に織田の綺麗な顔が現れた。 「お、い…!?」 痛みの原因である織田の、膝で押さえ付けたまま見下ろしてくる表情は以前も見たような俺に対しての苛立ちと怒りを感じる。 どこにスイッチがあったのか分からないが、その顔を見てようやく怒らせた、と気付いた。 「アンタ、博愛主義者かよ。つまんねぇこと言ってくんな」 「っ、は?誰が博愛主義、だ!…なに怒ってんだよ、足!どけろ」 肺のちょうど上から体重をかけられている為、うまく言葉が出てこない。まどろっこしくて嫌な気分だ。というか、なんで俺が足蹴にされなきゃならんのだ! 「どうせカオルとかいう奴の見た目が、女みたいで華奢だから可哀想とでも思ってんだろ。見た目に騙されてんじゃねえよボケ。ガタイいいやつ使って陰湿なことしてくる奴はそれ相応のことしてでも分からせてやらねえとあとあと面倒臭えんだ。そんなことも分かんないのかアンタは」 織田は怒っているときのほうが饒舌になるし、いつも以上に口が悪くなる。ここ数日で発見したクセみたいなものだったが、今日は一段と饒舌だ。 つまり比例すると一段とキレてる、とも取れるわけで。 「分かんねえ、よ!暴力に、暴力で返して、それでほんとに終わんのかよ…!」 それでもやられっぱなしは悔しいので、しゃがみこむ織田の胸倉を掴んでグッと引き寄せた。ギリギリまで顔を引き寄せ、苛立ちが浮かぶ顔を思いっきり睨み付ける。 「もし向こうが逆ギレして、お前が余計酷い目にあったら、どーすんだ!?俺が言いたいのはそういうことで…うえ、ゲホッ」 言葉の途中で胸部を押さえつける力が強くなり、咳が出た。…だー、もう最悪。分かんねえ。またスイッチ押したわ… 「俺がやり返されるような下手踏むとでも思ってんのか。しかも誰が暴力で解決したなんて言った?さすがにあんな細いの殴るかよ。手が痛いだけで何の得にもなんねえっつの」 「それ、今の俺にも同じ、こと、思えよな!」 薫くんのように華奢ではないが、俺もなかなかに薄っぺらいと思う。そんな俺を足蹴にしたところでそれこそ何の得にもならないだろ。ストレス発散か? 文句を言いながら顔を起こそうとするとパッと額を掴まれて再びシーツの上に押し戻された。 「っ…!」 「…あー、もうほんと腹立つ」

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