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「!?」 「ほら。これで満足したか?アンタの希望通りだろ?」 額を押さえていた手が離れ際にピンッとデコピンをする。 織田は意地悪そうな悪魔の笑みを浮かべて、用は済んだと言わんばかりに颯爽とベッドから飛び降りた。 「つーわけで今日の夜はこの前買ったブリが食いたいんで、よろしく」 ご丁寧にカーテンまでピシャリと閉めてくれる。視界から織田が消えて、保健室の扉が閉まる音が聞こえたところで、遠くの世界へ行きかけていた俺は寸前の所でハッと意識を取り戻した。 ――俺、今なにされました? 俺の記憶が正しければ、唇にマシュマロのようなものすごい柔らかい感触がしたぞ。 レモンの味、しなかったな…… 「って、いやいやいやいやいや!!そっちは希望してねえし!!」 仕方ねえな、って俺は謝れと言ったのであってキスをしろとは言ってない。 確かに『漫画みたいに押し倒されてチューされちゃった、とかなら別だけど』とは言った。確かに言った。けどそれを希望していたわけじゃない。あり得ない。何をどう取ればそっちになるんだよ! …あ? しかもさっきのって、俺の一生に一度のファーストキスじゃね?律がちょっかいを出して来てた時でさえ頬っぺたまでで、唇だけは死守してたのに。 いや言うな…!分かってる! ファーストキスも童貞も男が後生大事に取って置くものじゃないってことは。 でもさ? いくら美人でそんじょそこらの女子より綺麗な奴だったとしてもさ? ――男よ…? 俺は自分の血がついたシーツを抱き締めて、誰も居なくなった保健室でメソメソと泣くしかなかった。

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