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『バスケ優勝者は2年B組です!代表者は前にお願いしまーす』
マイク越しに反響する声を聞きながら俺は保健室の窓からグラウンドを見下ろしていた。
あの後戻る気にもならず、保健室で佇んで居たら球技大会の閉会式の時間になっていた。
途中先生が戻って来たが、ほんのり血のついたシーツを握りしめて乱れたベッドのうえでビービー泣いている俺を見てソッと肩に手を置くと再びどこかに消えてしまった。おい、勘違いすんな。違うからな。
でも折角なのでここから閉会式を見て今日はもう部屋に帰るのは晩飯ギリギリの時間にしよう。先程のアレは俺には衝撃がデカすぎる。
グラウンドの集団の中から、一際背の高い生徒が立ち上がりその長い脚を活かしながらあっという間に先頭に歩いていく。
律の姿に集団の特に可愛いグループの奴らがキャッキャ色めき立つのがここまで聞こえたてきた。
『バスケ選択者にも食堂一ヶ月食べ放題券をプレゼントします!しっかり食べて精力…じゃなかった、体力をつけてくださいね~』
よく見たら司会をしている生徒も律好みの可愛い系の男子だ。ナチュラルに精力って聞こえたんだけど。怖。
でも律、無事に勝てたんだな。良かった良かった。まあ律が負けるなんて思って無いけどね俺は!
司会の生徒から食べ放題券が入っているであろう封筒が律の手に渡る。そこへ突然体格の良いジャージを着た先生が躍り出てきて、グワッと律を抱き締めた。
確かあのヒゲモジャの強面はバスケ部の顧問だったはずだ。まるで美女(男)と野獣のような組み合わせに周りからギャアと悲鳴が上がる。
「さすが、我が部のエースだ!わはは!浅倉が優勝したということは、それ以外のバスケ部員は全員ペナルティーだな!放課後サボらず来いよお!」
律に肩を回してバスケ部顧問が集団に向かって指を指し、ガクッと肩を落としたのがきっとバスケ部だろう。声がデカすぎてここまで鮮明に聞こえてきた。
…そうか、ペナルティーってそうなるのか。ということはペナルティーを免れたのは律と織田だけ?
流れで織田の姿も探したが、集団の中からは見つけ出すことが出来なかった。あの言い方からしてもう部屋に戻っているのかも知れない。
あいつはほんとに何がしたいんだろう…。
会った時から謎だったが、さらに謎が深まったというか、謎しか残して行かなかったというか。
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