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バスケ部顧問に肩を抱かれながら律が少し困ったように笑っているのを見ていたら、不意にバチッと目が合ってしまった。保健室の窓から見えた俺へとブンブンと手を振ってきて、その他の生徒たちがこちらを振り返ろうとする。
あんな大人数に見られてたまるか…!視線で穴が開くわ!と慌てて窓から引っ込んだ。
「あっぶね…よく気付いたな、あいつ」
あとで会った時に、智ちゃんさっき無視したー!ヒドイー!なんて言われるのが目に見えているのがちょっと面倒臭いが仕方ない。
というか、律にどう言えば………
いや、言えないな!
織田にチューされたなんて、例え俺に対しての嫌がらせだったとしても仮にもチューだ。キスだ。唇と唇をくっ付けるアレだ。
「ブチ切れるだろ…」
それはいくらなんでも怖すぎる。
織田のせいで俺は悩まなくてもいいことに悩む羽目になってるし、腹立つから今日の晩御飯は何が何でも肉料理にしてやろうと我ながらささやかすぎる反抗を考えていると、ガラリと保健室の扉が開いて数人の生徒がガヤガヤと入ってきた。
「はー、疲れたあ~!」
「久々に真面目にやったべ」
「薫の頼みだししょーがねーけどさー疲れんだよなー」
「もう若くねえんだな」
なんて大きな声が聞こえて振り返るとそこには先ほど織田にワザと接触してきた3年の先輩達の姿があった。全員では無いが数にして4人。
このあまり広く無い保健室にガタイのいい男子生徒4人プラス俺はなかなかに窮屈だ。
「つーか、信ちゃん居ねえじゃん」
「あれ、ほんとだ。冷感スプレー貸してもらおうと思ったのに使えねえー」
「まあいいじゃん。勝手に使っちまおうぜ」
先生、あなた信ちゃんって言うんですね。そして俺が言うのも何ですが、またもや生徒に勝手に備品を使われようとしていますが…ドンマイ信ちゃん。
そんなことを考えていると先輩のうちの1人が俺の存在に気付いて顔をこちらに向けた。
「ありゃ、先客?………あ、お前さっきレイヤきゅんと一緒に居た奴だろ」
――…
ん?
レイヤきゅん?
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