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「センパイ。そういうことなんであいつには手、出さないでくださいね」
「……チッ。いいよなーイケメンは。あんな美人とヤリたい放題なんてよ」
「すんません、イケメンで」
サラリと告げる律に、先輩相手になんてことを言うんだと驚愕しているとグッと腕を掴まれ引き寄せられる。
「あと、こいつから玲哉の情報聞き出そうとしても無駄ですよ。連絡先知らないってのも本当ですし、センパイ方の役には立ちません」
「役に立たない…」
もっと他の言い方は無いんかい、とツッコミたい。
「なので玲哉目的で、こいつにも近寄らないで下さいね。…センパイ達の顔、しっかり覚えましたから」
「!」
「……じゃあ、失礼しまーす」
用は済んだとばかりに律はくるり、と先輩達に背を向けさっさと歩き出してしまう。腕を掴まれたままの俺はもちろん引き摺られるように律の後について保健室を出る。
出る直前、先程までうるさいくらいだったのに嫌に静かな彼らをチラリと振り返ると皆一様に口を開けポカーン顔だった。
それって一体どういう心境の表れなんですかね。
「あのー…律。俺1人で歩けるよ?」
腕を掴まれたまま廊下をどんどん歩いていく律に、そろそろ腕を離してくれよ、という意思をさりげなく伝えるとようやく掴んだままだったことに気付いたのか律の手が離れた。
周りにはまだ生徒の姿が見えないので、まだ閉会式中なのだろう。
「やー、助かったわ。閉会式抜けて来てくれたの?あ、優勝おめでとな」
「…智」
「どした?」
律がくるりと俺を振り返る。
――ん…?今…
「なにやってんの?」
先程まで浮かべていた爽やかな笑顔が消えていた。
「…え?」
「試合、応援しとくって言ったよね?なんで居ないの?それにどうして保健室なんかに居たの?」
「…それは…ごめん」
「ごめんじゃなくて、俺はなんでって聞いてるんだけど」
「………」
お、怒ってる…よな。やべえ。
そういや応援しててね、と言われたのに抜け出して織田探してたんだった。
「……一応、その…織田が心配で」
「玲哉?」
「もちろん変な意味じゃねえよ!?…同室者だし、律の恋人だし、薫くんの言ってたことが気になって何処にいるのか心配になっただけで」
「…それで玲哉は見つかったの?」
「おう…。保健室で寝てた」
俺の言葉に律の表情が少しだけ和らいだ気がした。やはり気になっていたんだろう。
「あいつ、ほんと、自由だよなーっ?」
「で、玲哉すぐに見つかったのに、智はどうして直ぐに戻って来なかった?」
話を逸らしたくて織田の話題に持っていこうとしたが、今日の律は虫の居所が悪いというやつなのかもしれない。
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