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「ほら」
「…すんません」
自販機で買ったばかりの水滴の付いたスポーツドリンクを手渡すと、ベッドに横たわる彼はそれを自分の首筋に当てて、は~…と息をついた。
頭より足の方を高く上げ、頭と脇に氷嚢を置いて全身を冷やしている現在、保険医曰くやはり軽い熱中症ではないかとのこと。
確かに今日はいつもより暑く、夏だと言ってもおかしくはない程に俺も汗をかいた。
もちろん夏も危ないが、意外とこういう時期の方が危なかったりするんだよな。水分補給、大事。
この間織田が呑気に昼寝をしていたベッドとは違うベッドで、俺は彼の付添い人として簡易のパイプ椅子に腰掛けていた。
「顔の火照り、だいぶ治まってきた…ましたね」
「ぁ~…マジか…いや、マジっすか…」
彼も少し落ち着いてきたのか、俺が同い年なのか先輩なのかはたまた後輩なのか分からず言葉遣いに迷っているようだ。お互いに変な気の使い方をしていてちょっと笑える。
「あのさ、今更聞くけどあなた様は何年生なんですか?」
「俺は、2年生……っす」
「あっ、なんだ!同い年か!じゃあタメ口でいいよな?」
「2年なのか…じゃあタメ口で。…悪かった、迷惑掛けて」
氷嚢を片手で抑えながら、彼はちらりと俺を見上げて申し訳なさそうに謝った。彼の動きに合わせて氷嚢の中の氷がぶつかりカランと涼やかな音を立てる。
「いや、全然。俺もたまたま目に入ったから、つい。でも大事にならなくて良かった」
「暑さで疲労が来ただけかと思ってたんだ。…えーと」
「あ、俺は末永 智。ちなみにB組」
「末永か。…末永が来てくれなかったらヤバかったと思うし、マジで助かった。ありがとう…今度食堂の飯でも奢らせてよ。俺の名前は藤白 悠真 。F組」
ふじしろ ゆうま、と名乗る塩顔イケメンは老若男女が好みそうな好青年の笑顔で笑いかけてくれたが、頭に氷嚢を乗せている所為でなんだか痛々しいし幸薄そう。
そのギャップについ吹き出してしまった。
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