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ガツンッ…!!
「っ」
くらぁ、と視界が回る。
まさかの頭突きという古典的で実は一度も体験したことのない攻撃を食らわせられ俺は額を抑えて後ろに倒れそうになった。
というか、織田が支えてくれるはずもなく呆気なく倒れて床に崩れ落ちた。
だからさ、さっきから心の中で言ってるけど額は鍛えようがないんだって…
「お、前…ふざけ」
額を抑えてぷるぷる震えながら顔を上げると、ソファーの上で上半身を起こして俺を見下ろす瞳と目が合った。
――こんな顔をされるくらいなら悪魔の笑みを浮かべられていた方がまだマシだ。
そう思ってしまうような冷たい氷の女王みたいな表情の織田に、ピタリ、と動きが固まる。
「アンタのあれファーストキスじゃねーよ」
背後にブリザードでも吹雪いてるんじゃないのかと錯覚しかけた俺の耳に入り込んできたのは、聞き捨てならない台詞。
「な…?」
「初めてじゃねーつったの」
「……い、いやいや初めてだし!だって初めて付き合った子とは手すら繋げなかったんだぞ!」
マジかよヘタレ…みたいに口歪めるのやめて。
「…アンタはほんとにお気楽なもんだよな」
暴言を吐かれると思った口から飛び出たのは、勘違いだろうか。ほんのり寂しさを含む台詞。
「なに…?」
小さく聞き返してみたが織田は返事もせず、上からグイッと俺の胸倉を掴んでお互いの顔が近付く。
あっ、と思った。まずい、と。
しかし抵抗する暇もなく先程凝視していた唇は、俺の風呂上がりの水分をたっぷり含んだ唇を塞いでいた。
「んん…!?」
や、やわらかい…
驚きに目を見開きながら、思考は与えられる感触に奪い取られる。まるで吸い付くような柔らかさに心拍数が急上昇していく。
唇が触れ合ったのは前回と同じようにほんの一瞬だった。
またキスされたのだと脳が認識すると同時に、胸倉を掴んでいた手がパッと離される。
え、うそ、そんな急に離され、たら…
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