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「っぶねええええ…!?」 案の定バランスを崩し背後のテーブルの淵に後ろ頭を打ちそうになった。何とかなけなしの腹筋に力を入れて堪えると、織田の手が再び伸びてきて俺の頭をガシッと掴む。 「あれがファーストキスっつーんだったら、これでアンタのセカンドキスも彼女でもなんでもない男の俺だな。…ハッ、オメデトウ」 「んなっ……」 馬鹿にしたように笑うと手を離す。織田はソファーの横から軽い身のこなしで飛び降り、風呂場の方に歩いて行ってしまった。 一瞬俺を足蹴に降りてくるのかと思ったが流石にまだ人間として認識されているらしい。床だと思われなくて良かった。 良かったが問題発言と問題行為を投下するだけ投下して放置するというある種の嫌がらせに体を震わせる。 「あああ、ぁ、悪魔………悪魔だ……」 悪魔の所業としか言い様がない。嫌がらせでキスできるなんて最近の男子高校生は乱れ過ぎじゃないのか?俺、ついてけないです。 「くそぅ…」 ごしごしと手の甲で唇を拭う。こんなことしたって意味ないのに、またもやいとも簡単に唇を奪われてしまった悔しさが少しは紛れる気がした。 同時にメンタルにも衝撃を受けたせいか、バクバクとうるさい心臓も早く落ち着くんじゃないかと期待する。 「………」 ――あれがファーストキスならって、ファーストキス、だよな? なんだか織田と話をしていると俺はもしかしてどこか記憶が欠落しているんではないだろうかと不安になる時がある。 謎の発言を残され悶々としながらも、未だジンジンと痛む額ごと顔を冷たい床に押し付けた。 ああ、癒しが欲しい。

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