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「なあ、律。俺って中学の時に付き合った子とキスしたと思う?」 「してないよ」 「……だよな」 お昼前になり教師が教室から去るか去らないかのタイミングで隣で眠そうにしていた律に聞くと驚く程のスピードで返事が返ってきた。即レスかよ。 「あんなたった1週間しか付き合ってないのにヘタレな智ちゃんがチューなんてするわけないじゃん」 「ヘタレで悪かったな。つーか1週間じゃなくて2週間だし!」 「そだっけ。てか急になーに?…あ、もしや今更になって俺とチューしたくなった?してあげたいのは山々だけど、残念ながら俺にはもう玲哉という美しい恋人がいるので。出来かねます」 「出来かねてくれて結構。冗談は顔だけにしてくれ」 「まあこんだけイケてるなんて冗談にしたくなるよね。分かる分かる」 「なんだよ今日は絶好調にウザいな」 「智ちゃんこそ意味不明な質問すんのやめてくれるー?なにその質問。ほんとはなんなの?」 律が体ごとこちらを向く。確かに突然する質問にしては意味不明だわな。 「やー、最近俺自分の記憶力に不安があってだな…事実確認みたいなもんだから、気にすんな」 「出た~気にすんな。それこそ気になるんですけど」 「末永ー!」 律がぷりぷりと文句を言い出し、俺がそれを見て面倒臭くなった矢先。 俺達の席に近い後ろの扉から聞き慣れない声が飛び込んで来た。 ドアの方に顔を向けると、そこには昨日熱中症でノックアウトされそうになっていたところを助けた鶴が立っていた。 …間違えた。 鶴じゃなくてサッカー部の藤白悠真だ。 「おー、藤白じゃん!」 「どーも。良かった、覚えてくれてたんだな」 藤白が昨日よりも元気そうなサッパリしたイケメンフェイスを綻ばせて俺の元に近寄ってくる。昨日は赤く火照っていた頬も今日はすっかり正常な色を取り戻しているようだ。 「そりゃ昨日のことだしな」 いくら俺の記憶力が乏しいからといって、昨日出会った人物の名前を忘れたりしない。 しかも俺みたいな凡人ならともかく、藤白みたいに顔のいい奴、余計に忘れないよな。 謙遜なのか控えめなのかどちらなのかは分からないが、ごく当たり前の返事を返すと藤白はそりゃそうかと笑った。 「だれ?」

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