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「…なあ、藤白ってもしかしてさ」 「うん?」 「お待たせ~。ご飯どこ行くの?食堂?」 少しの違和感を感じ疑問を投げかけようとしたが、それより先に律が織田を連れて戻ってきて意識が逸れた。 「ああ、食堂に行くつもり。いいよな?末永」 「もちろん。俺に選択権はない」 「なんだそれ」 藤白が軽やかな笑い声をあげる。 健康な時の藤白は幸薄そうだった昨日が嘘みたいに元気だ。その割に笑い声がとても柔らかくて優しい。雰囲気も落ち着いていて悪い奴じゃないんだろうな、という安心感を抱ける。 素晴らしいギャップにお前もどうせモテるんだろ…男子校でもよ、と。 羨ましいようなそうでもないような。共学だったらきっと羨ましい。 藤白の笑顔をアホ面で見つめていると、俺の後ろ頭を誰かに毛髪ごとぐしゃりと触られた。振り向くと、手を伸ばして来たのは律だ。 「行くよ?」 「はいはい」 「………」 返事をしながら律の背後に居た織田と、不意に視線が絡む。 昨日の夜、頭突きとキスをされてから実はまだ会話をして貰えてない。 今日は珍しく朝飯の時も無言だったのだ。今も絡んだ視線はすぐに逸らされて俺は、うぐ…と言葉を飲む。 頭突きされたのは俺なのに。 キスしてきたのはあいつなのに。 なんだか俺の方が悪いことをしてしまっているような気がして変な気分だ。気まず。 つか、この4人で食堂行くのかよ… ーーー 「うおおおい!悠真!?なんだそのメンツは!?」 「よっ。こいつらB組の奴らだよ。これから飯食うんだ」 「んなの見たらわかるけど…じゃなくて、あの…その…」 「あ、ちなみにこいつが昨日話した俺助けてくれた末永。命の恩人」 「…どーもー」 藤白が隣に居た俺の腕を引く。引かれた以上出ないわけにも行かず、引き攣る笑顔を浮かべた。 俺の紹介に明らかにテンションを下げる目の前の生徒。どうやら藤白と同じサッカー部のようだが、もちろんお目当ては俺ではなく織田か律のどちらかだ。 目の前の奴はいかにもチャラそうな男っぽい生徒だから多分織田を紹介して欲しいんだろうな。もしこれが華奢で可愛い系の生徒だったのなら律の方だ。 どっちに転んでも俺ではないのに、藤白はことごとく俺を紹介するものだから先程から、頬を染めるサッカー部→末永の紹介→漂うお前じゃないよ感、の一連の負の連鎖が続いている。 藤白はあれかな。天然なのかな。 あるいは生粋の空気読めない君か。

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