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「へぇ、藤白は姉ちゃん居るんだ。似てんの?」
「あー、どうだろう。小さい頃は似てたけど今はそうでもないかも。全然会ってないから分かんないけど」
「ここ入ってると家帰れねーもんなあ…」
「末永達は?兄弟とか居るのか?」
4人で真っ白な食堂のテーブルを囲んで各々好きな物を食べながら、いつの間にか話題はお互いの家族構成の話になっていた。
「智ちゃんは年の離れた弟が居るんだよ~。ね?」
「そうそう…って、なんでお前が答えるんだよ」
「だって俺たち昔からの裸の付き合いじゃーん」
「昔から…裸の…!?」
「待て藤白。変な想像するな。こいつとはただ単に小学校から友達で小さい頃一緒に風呂入ってたってだけだから」
余計な一言を加える律に、藤白が真に受けてそっと顔を赤らめる。ピュアっぽくて新鮮だけど、お願いだからやめろ。
「アンタ、弟いたの」
黙々と自分の焼き秋刀魚定食を食べていた織田がふっと顔を上げた。今日初めての会話に一瞬驚いて言葉がどもる。
「あ、お、ああ。まだ中学生とかだけどな」
「もうほんと可愛いんだよ~。智ちゃんとは全く似てないんだけど、俺が家行くといっつも律兄、律兄って寄って来てさあ」
ほんと可愛いと言った後に俺と似てないという律。それも“全く”という完全否定を頭に持って来るなんて無意識って怖いよな。可愛いなんて褒められて喜ぶ人間じゃないけど、あとで覚えてろよ!
無神経な律が言う通り俺には中学生の弟がいる。
そしてあいつは律のことを律兄と呼ぶ。にも関わらず、俺のことを智兄とは呼ばない。では俺が弟からなんて呼ばれているのか。それは…
『智、リモコンとって』
『おかえり、智。また律兄?』
『あ。智のアイス美味しそう。一口一口』
と、まあ何故か「智」と呼び捨てにしてくる。
まったくもって可愛くない。
どうして実の兄が呼び捨てで、兄の友達を律兄なんていじらしい呼び方をするのか。理解し難い。俺の存在とは如何に。
弟は昔から超絶イケメンな律を尊敬してる節があって慕っているように思うのだが、逆を返すと俺は尊敬されてないということになるわけで…俺も智兄って呼ばれたい。
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