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「あっあのさ、藤白!さっきも思ったんだけど、藤白ってもしかして女の子が好きな人だったりする?」
織田の怒りが爆発して藤白へ被害が及ぶ前に慌てて話題を変える。織田の意識を違う方へ向けたいと言う思いもあったが、先程教室でも感じた疑問もあったのでちょうど良い。
「?ああ、そうだよ。末永は違うのか?」
「違わない!俺も女の子が好きで、むしろ女の子しか好きじゃない」
「智ちゃんチャラ~」
ぷぷ、と指先を口に当てて笑ってくる律を肘で小突く。
「お前に言われたくないわ!」
「そういえば浅倉は男もイケるんだよな?噂によると」
「藤白クン噂を鵜呑みにするのはよくないよ?」
「事実だろ」
「まあ女でも男でも突っ込む場所があるんだからどっち好きになろうと変わらないよな」
ケロッとした口調で言う藤白に、目が点になる俺。
純情そうな顔をしていたと思えば、突っ込むだのという純情とは程遠い単語を使ったことに驚いた。実は遊び人なのか?
動揺しまくりの俺に気付いて藤白が苦笑いをする。
「末永…下品だったな、悪い。サッカー部の奴らがよくそういう話するから、俺もいつもの癖で」
「あ、や、全然。下品とは思ってねーよ。ただビックリしただけで…そういや藤白そんな風だけどサッカー部だもんな」
忘れていたが、俺が一番苦手意識を持つサッカー部員とこうして飯を一緒に食ってるなんて。なんの因果か。でも藤白って全然チャラチャラウェイウェイしてないし話しやすいんだよな。
「待ちたまえ藤白クン。選択の基準が突っ込む場所があるかだけじゃないのよ?もう一つ重要なこともあるんだけれど、お分かりかしら」
「なんでオネエ言葉」
「もう一つ?なんだろう。織田は分かる?」
藤白は律の台詞に首を傾げながら、いつの間にか怒りが治ったのか、しれっと食事を再開させていた織田に顔を向ける。
またもや俺たち全員の視線を一身に浴びることになった織田は、気怠げにたった一言。
「顔だろ」
その返答に、なるほど納得だと言わんばかりに頷く藤白と、さすが玲哉!と嬉しそうな律。
そして、全然納得のいかない俺は眉をしかめる。
「お前らな…ナチュラルに好感度下がる会話すんなよ…」
結局顔のいいやつは顔で選ぶのか。性格じゃないのか。藤白には性格だと言って欲しかった。
ついでに藤白がそのKYぶりを発揮して「それでお前らどっちがどっちに突っ込むんだ」と聞いてくれないだろうかと期待したが、さすがそこまで立ち入ってくれなかったのが残念でならない。
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