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乗り越えられないカベ

やはり運動部には運動部のノリと言うものがあってだからあんなに楽しそうなのか、と笑い合う2人を見て俺は肩肘を付いてその様子を遠目から眺めていた。 戯れる男子生徒2人を見て何が楽しいんだと思われるかも知れないが、まあ楽しくない。全然楽しくない。これっぽっちも悦の感情が湧かない。 ただどうして俺には塩対応のさらに上を行く粗塩対応なのに、その塩顔には楽しそうな笑顔を向けているのかと疑問が浮かぶくらいだ。 「なあ、律」 「なーに?」 「お前はあれを見てなにも思わないのか」 「あれって?」 「あれだよ!アレ!あの窓際の席で楽しそうに談笑してるお前の恋人と俺のNEW友達のことだよ!」 NEW友達と書いてニューフレンドと読む。 俺の八つ当たりに近い文句に隣の席で携帯を弄っていた律が顔を上げて窓際に目を向けた。 「あ〜アレね。最近仲良いよね。律、焼けちゃう」 「焼けちゃうならこんなとこで携帯弄ってないで言ってこいよ。そんで藤白を俺のとこに連れてきて!」 「智ちゃんが言ってきたらいーじゃん。俺は今主将と大切なお話中なんです」 「話してないだろ!」 「画面上でお話してんの〜。予選来月からだから俺も忙しいんです〜」 「あ、バスケか。応援行けたら行くわ。つか、主将とそんな話してるって事はやっぱ次の主将は律…?」 律が主将…こんなチャラチャラして語尾伸ばしちゃうような奴が主将だと?「は〜い、みんな集合〜。今日どうしたの?元気出してこー」とかふわふわしたこと言ってそうな……なーんて。そんな事は言わない。 律は意外と真剣にバスケに取り組んでる。 だからバスケ部の次期主将が律だとしても何ら違和感はない。むしろ適役だとさえ思う。 「主将ねー、まあそれは成り行きに任せる。で、あっちの次期主将をなんでこっちに来させたいわけ?」 律が携帯の画面を落として、足を組みながら俺の方へ身体を向ける。ボク足長いですアピールはやめろ! 「だって!なんだあの楽しそうな雰囲気は!この前みんなで飯行ってから藤白の奴、織田にべったりじゃん」 そう…そうなんだよ!つい先日、4人で飯を食いに行って、帰りに教室の前で連絡先を交換し、これから数年ぶりの新しい友達との楽しいエンジョイライフを楽しむ気満々だったのに。 何故か藤白は俺ではなく織田に会いに来る頻度が増え、当初ぽかんと空いていた俺の口はいまや横一文字…下手するとへの字に変わっていた。

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