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02
律が嫉妬すると思って最初は「藤白はノンケだから気にすんな」とか「織田って他のクラスからも注目の的なんだろ?だから敵情視察的な?」とか意味不明なフォローをしていた俺だったが、律の反応といえば
「やっぱ玲哉も転入してきたばっかだし、新しい友達ができるのはいいことだよねー。俺も彼氏として嬉しいよ?」
とぬかしやがった。なんでやねん。思わずエセ関西弁でツッ込みたかったぐらい拍子抜けだった。
何の話をしているのか、織田は自分の席で足を組んで後ろの壁に凭れ掛かり、その横の席には本人不在なのをいい事に藤白が座って織田へとニコニコ話し掛けている
そして織田も時折ふっと笑う。まさに天使の微笑み。悪魔の心を持っているとは思えない美しさ。
「…くぅぅ…なんだこの気持ちいぃ」
「とーもちゃん」
またもや視線が窓際の2人に釘付けになっていたら、後ろから髪の毛を触られる感触。複雑な顔のまま振り向くと律が長い足を八の字に開いて足の間に片手を置いていた。
もう片方の手は俺の髪に触れていたようで、顔のすぐ近くにあった。
「藤白クンってサッカー部だよ?智ちゃんの苦手な。智ちゃんとはあんまり気が合わないんじゃない?」
「…でも藤白はそんな感じじゃなくね?」
「そうかなあ?仮にも恋人の目の前であんな堂々と仲良くできるなんて、あんまり印象良くないけどねえ」
笑う律に、ほんのり寒気を覚える俺。
さすがに律も気になり出したか。こいつを怒らせたら怖いからな。普段怒らないやつが怒ると怖いとはよく言ったもんだが、織田と律なら確実に織田にキレられる方がマシだとさえ思う。
俺はガタッと椅子を鳴らして席を立った。
「どこ行くの?」
仕方ない。
これは律の為であり、藤白鶴の為だ。
「任せろ。俺がビシッと言ってきてやる」
格好付けて親指を立てる。シラけた顔をされてそうな気がしたので、律の方は振り向かずにさっさと織田達の元へ歩み寄った。
「藤白」
「でさ……お、末永!どうした?」
俺の呼び掛けにパッと顔を上げた藤白。数秒前まで笑っていた顔のまま見上げられて言葉に詰まる。
…なにその笑顔…一体どんな話をしてたら織田との会話でそんな笑顔になれるわけ…?
「…どうしたって聞かれると、まあ、どうもしないんだけど」
「?…お腹痛いとか?」
「お腹は正常です………織田くんや」
「あ?」
「今日の夜、何食べたい?」
「さか…」
「魚ね!オッケー!お前のそのブレない姿勢尊敬する。じゃあそういうことで失礼しますどうもお邪魔しまし…」
「末永って料理するの?」
「た…、…?…まあ、一応それなりに。するよ。簡単なもんしか作んねえけど」
楽しそうな藤白に「織田とばっか話さず俺とも話しようぜ」なんて言えなかった気弱かっこ笑かっことじるな俺に、眉間に皺を寄せて返事をする通常通りな織田。ちなみに最近会話少なめ。
そして、俺に向かって一重の大きな瞳をきらきらさせた藤白は、少し興奮気味にこんな事を言ってきた。
「俺も末永の手料理食べてみたい」
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