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2人がそんな仲良いなんて知らなかったからビックリした、と笑顔で言われて「あの時見られてたのか。そりゃそうだよな」と別段焦ることもなく思い出した。
つーか藤白も随分な時間差でベッタリ関連のこと思い出すな。
「あんなとこで堂々と抱き合ってるからさ、思わず声掛けた。大丈夫だった?邪魔したよな?」
「なんでだよ。むしろ抱き合ってたわけじゃなくて一方的に俺が抱き付いてただけだし。白鳥くんからしたら助かったって思われてんじゃねえかな」
なーんて自虐気味に言ってみたけど、俺たち友達だもんねー!最後のなんて思ってないって分かりながら答えてるもんねー!
などと調子に乗ってみたが、いくら友達だからって男に抱き付かれて嬉しくはないか。…あ?
って事は、あながち間違ってない?
心の中で1人浮き沈みの激しいことを考えていると、隣から「白鳥?」と小さな呟き。
「白鳥って、あの白鳥クン?智ちゃんと同室だった?」
「その通り。俺に家事のイロハを教えてくれたまあいわゆる?友達ってやつ?」
友達の二文字を強調して答える。
聞いてきたくせに律からは興味のなさそうに「ふーん…」という相槌。なんだお前。
「アンタ律以外にも友達居たんだ」
大変失礼な発言をしたのは、卵料理だったことに文句を言いたかったであろうが、丼片手に黙々と食べていた織田だ。
驚くほどに丼が似合わない。同じ丼でもロコモコ丼とかのほうがまだ可愛くて似合う。
「普通居るだろ。俺をなんだと思ってんだ。ただ律と一番仲がいいってだけで他にも白鳥くんとか、えーと、あと、……居るんだよ!」
白鳥くん以外に出てこない恐怖。
今日のことが無ければ白鳥くんさえも出てこなかった事実に慄いた。
「俺は入ってないのか?」
「え」
「末永の友達枠、俺脱落した?」
慄きながら声を掛けられた方へ顔を向けると、ショックを受けたのか親子丼をテーブルの上へ、そっと置く藤白が居た。
やばい、普通に忘れてた。
だが忘れてたとはさすがに言えず言葉に詰まる。それに藤白は…
「も、もちろんスタメンだよ!スタメンに決まってんじゃん!ただ…」
「ただ?」
「ただ、まあ、あれだよ。あれ。…もうすこーし、俺とも喋ってくれたら、もっと嬉しいというか、なあ?ちょっと織田ばっかりと話し過ぎっていうか…なあ!?律!?」
「知らない」
ああああああ!いいい言ってしまった…!
たまらず本音がぽろりしたぞ。
ぽかんと口を開ける藤白を見て、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
見る勇気もないけど、織田の顔なんて絶対気持ち悪いこと言いやがってとドン引きしてるに違いない。
しかも困った時の律頼みと話を振るが、何を拗ねているのか援護射撃をする気はゼロらしい。
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