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「………なるほど」 俺の勢いに体を数センチ離した織田だったが、なにを納得したのか突然俺の後頭部に右手を回してきた。 しかも優しくとかそんなんじゃない。逃げねばやられるぐらいの危機感を感じる力強さだ。 「なんだこの右手…!?」 「安心しろよ。俺は」 そして、残った左手が机の上の何かを掴む。 顔が動かせないので何を掴んだのかは見えなかったが、見えなくたって今机の上にあるものは1つしかない。 「律と別れる気なんて微塵もねえか、ら!」 「待…んぐぅ!?」 待て、と口を開けたのがよろしくなかった。 大口を開いた俺の口目掛けて、フルーツとクリームたっぷりのプレミアムなロールケーキがぶち込まれた。 正直に言おう。 昔、律にお遊びでケーキをフォークでアーンされて食ったことはある。彼女にされたかったのになんでお前にされてんだよ、うめえよケーキ…と涙目になったことならある。 だが、こんなにもダイレクトに口の中にケーキを突っ込まれた事は一度だってない。ちゃんと俺が噛んで飲み込めるぐらいのベストな大きさにしてくれたやつとは大違いで、あの、ほんと、え…無理。マジ無理。窒息する。 言葉にならない呻き声を上げて体を織田から離そうとしたが、後頭部の腕の力が強すぎてビクともしなかった。相変わらずの馬鹿力だ。 「っ…む…!」 「よく味わって食えよ」 うるせえわ!お前のせいで全然味わえる余裕なくなってんだろーが!なんて暴言を吐いてやりたいのに喋る事もままならない。 逃げられないなら食うしかない、と急いでもぐもぐ口を動かすことにした。 だって背に腹はかえられないし。高校2年生ケーキで窒息死なんて見出し絶対嫌だ。 「あーあ、汚ねえな」 さすがに人としての理性が発動したのか残り3分の1になったぐらいのところで織田が手を引いた。 その3分の1をまた口に突っ込まれでもしたらたまらないので、もぐもぐしながら慌てて叫ぶ。 「もっ…食え、ねーから!」 半ば涙目で喚けば織田が鼻で笑った。この悪魔!と罵ってやろうとした俺だったが、直後の織田の行動に動きが止まる。 嘘、嘘。待って。嘘だろ? 「ちょっ…!?」 織田が食べきれなかった残りのケーキを自らの口の中に入れたのだ。あの、織田が。 しかも半分は俺の口に入っていたやつだ。 先程無理矢理突っ込まれたので、原型もなくボロボロで、潔癖症な人なら悲鳴をあげそうな見た目のやつ…だぞ? 「…甘」 織田も1時間ほど前に同じものを食べていた筈なのに、顔を歪めて言う台詞に藤白の前では我慢して食べていたのだと気付いた。 そんな気遣いができる奴なんだ。やればできるじゃん。と一瞬だけ上から目線で考えていた俺の口元に織田の指先が触れた。

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