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間違いなくクリームまみれの口元を、織田の人差し指がすす、と撫で取るような動きをする。 え、え、まさかそれも、あなたのお口に入れる気じゃ… 「口ン中のもん食った?」 「……く、食った」 俺の顔に触ってきたことも驚きで、目を見開いたまま織田がどうするのか警戒しつつ見つめていると、浮かべたのは性格の悪そうな笑み。 「コレ。アンタのお気に入りが買ってきたやつだったよな。ちゃんと残さず食わねえとあいつ悲しむだろうなあ?」 「え、」 そして、織田のクリームが付いた人差し指が躊躇も何もなく、ぬるりと俺の口へ滑り込んだ。 っ、お…こ、こっち!? 「む、…んっ!おあ(織田)っ!?ひょ…」 噛まないように、触れないように、舌を奥に引っ込ませて喋ったもんだから上手く発音できてない。 しかもそんな俺の努力も虚しく、クリームが絡んだ指は俺の舌に平気で触れてくる。 待て待て待てなんなんだよコレ…!残さず食えって…舐めろって!?無理だって!無理無理何が嬉しくて男の指舐めないといけないんだ!誰得なんだよ!お前俺のこと嫌いなんだろお!? 「む、い(無理)れったい(絶対)むい!(無理)」 「律にアンタが俺に、律と別れる気ねえのって聞いてきたって言っていい?」 「なぁ!?らめに(駄目に)ひまってんらろ(決まってんだろ)…!」 んなことしたら律が誤解してブチ切れるに決まってる。下手したらなんでそんなことを聞いたのか根掘り葉掘り聞かれて藤白の好意がバレるなんていうオチが待ってる。 別にバレたっていいじゃないか?違うんだよ。 俺は食ってしまったんだ…口止め料を。 不可抗力でも約束は守るべきだと俺の中の天使が騒いでいる。「守るべきっていうかさあ!絶対面倒くさいことになるよ!黙っててもらうほうが得策だよ!」 そうだよな。これ以上面倒ごとは避けたい。処理しきれなくなる前に、なんとしても断固阻止せねば。 背に腹はかえられぬ。 ああ、二度目。

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