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Ⅲ 罪と罰⑤
この世界は理不尽だ
なぜ総理が死ななければならない?
日本のため、国民のために生涯を捧げてきた……
総理は我が国のために!
銃声が轟いた
散る鮮血
「……奏クン、勝手に私を殺してはいけないよ」
「総理!」
彼は立っている。
右肩から血を流して。
銃弾が逸れた。
刹那に放ったナイフが刺客の手を刺した。
「維新を生きた漢は諦めが悪くてね。何が何でも生き残るさ」
虚勢だ。
弾の貫通した右肩は重傷で、立っているのが精一杯だ。
刺客が左手に、もう一丁の拳銃を構えた。
この世界は理不尽だ
理不尽な世界だから、あなたを消そうとする理不尽から、あなたを守る。
俺は、あなたのボディーガードだから!
「下がりなさい!」
「嫌です!」
命令は聞けない。
総理の前に、俺は立ちはだかった。
この世界の理不尽を変えるんだ。
俺のやり方で。
理不尽を変えるために、俺は進む。
きっと維新の志士ならば、
否
(総理だって、そうした)
弾は止められる。
俺の体で
大切なものを守るため
世界の理不尽を止めてみせる!
今の俺……
全裸で、犬耳で、首輪つけて。亀甲縛りの跡までついてる。
全然、格好よくないけど。
(これが俺の人生だ)
ま、仕方ないっか。
撃鉄が下りる。
「君の覚悟を受け取った」
不意に。
「君の命を預かる」
背後から抱かれて、頬に手を当てられ。
振り向かされて。
俺は総理と口づけをした。
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