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【誰もいないリビングで】永倉ミキ

*Season 1*  生まれた時から、(いく)春兎(はると)のものだった。柔らかな頬をした小さな赤ん坊の時から。  大事に大事に守ってきた、春兎の宝物。長い睫毛も、小さな赤い唇も、誰にも触れさせない。  可愛い郁。  くすぐるとキャッキャッと声を立てて笑っていた。  だんだん身体が大きくなって、それでもまだ、肌は雪のように白くて滑らかで。その肌を手のひらで撫でてやれば、気持ちよさそうに目を閉じた。  そして、蜜のような甘い吐息を吐く。  その姿に、春兎は欲情した。  薔薇の蕾のような唇を割って指を滑り込ませ、上あごの裏を擦る。うっとりと薄い瞼が開いて、春兎の指を赤い舌が舐めた。初めから全部知っているかのように、その舌が春兎の指をいやらしく吸い上げる。  春兎の下肢が疼く。この口の中に別のものを咥えさせたら、どんなに気持ちいいだろう。考えるだけでイきそうになりながら、まだ十歳の幼く細い身体を撫でていた。  今は、郁と二人きり。日常の中で愛し合える数少ない時間だ。  午後の日差しが差し込む、ほかに誰もいない彼らの家のリビングで、春兎の指が郁の心と身体を開いてゆく。  半分閉じた瞼の下の淡い色の瞳。透明な琥珀のような瞳が映すのは、春兎の姿だけだ。  ほかには何も見せない。見せたくない。 「春兎、兄さん……」 「どうした、郁?」 「あのね……、アレ、してほしいの……」  恥ずかしそうにねだるのは、口での愛撫だ。  ゆっくりと郁のシャツのボタンを外し、白い胸をあらわにする。小さな薄紅色の粒を舌で舐め上げると、郁の唇から吐息が零れた。転がして軽く噛むと、切なそうに身をよじる。 「あ、あ……」  背を反らし、薄い胸を精いっぱい突き出す。赤く尖った場所を唇で吸い上げると、呼吸が荒くなってゆく。 「あ、あぁ……、はる……」 「郁……」  春兎は郁を抱きしめた。腕の中の小さな身体、その身体のあちこちに赤い花が散る。春兎が刻んだ所有の証。けれど、もうそれだけでは足りなくなっていた。  郁を貫きたい。無理だとわかっていても、限界だった。 「あ、春兎兄さ……、あぁ……、ヘンなの、僕」  春兎の指に翻弄された郁が、頬を染めて何かを訴える。 「ヘン? 何が?」 「あ、あ、……。おなかの……下のほうが……」 「そこが、どうかしたのか」 「下のほうが……、ああ……」  まだ子どものままのその場所をまさぐり、必死に腰を揺らす。もどかしそうに身をよじり、熱い息を吐いて春兎を見つめた。 「春兎兄……さ……、お願い、たすけて……」  どうにかして。  上気した頬と潤んだ瞳が春兎を狂わせる。 「あぁ……、お願い……、おかしくなる。僕、おかしくなっちゃう……、春兎……」 「郁……」  熱い身体を膝に乗せたまま、春兎は堪えきれずに、完勃ちした自分の雄をボトムの前立てから取り出した。 「あ……っ」  驚いて目を瞠る弟の前に、それを晒す。 「春兎兄さん……? それ……」  すごい。どうして? と慄く郁の前で、自身を握り締めた。 「見てるんだ」 「あ、うん」  おっきい、と囁かれて、たまらない気持ちになる。数回扱き上げただけで、限界が近かった凶器は弾けるように白濁を溢れさせた。 「は、あ……」  荒い呼吸とともに達した春兎に、郁は目を輝かせた。硬く張り詰めたものがうなだれる様を、息をのんで見ている。 「気持ち、いいの……?」 「ああ」  郁の声がかすれる。 「僕も、それ……したい」  もじもじと足を擦り合わせ、切なげに春兎を見上げる。その仕草に、春兎の雄に再び熱いものが満ち始めた。郁にそれを握らせると、熱とともに質量が増した。 「あ……、すごい」  太く硬く、生き物のように蠢き出す凶器を、郁が感嘆の眼差しで見つめる。軽く開いた小さな唇に、それをねじ込みたい衝動が春兎を襲った。 「春兎兄さん……、おしり……。いつもみたいに、おしりに……」 「指が欲しいのか?」  郁がこくりと頷く。目は潤み、頬は薔薇色に上気していた。  郁のハーフパンツと下着を下ろし、白い双丘を割り開く。軽く湿らせた指を、郁が望んだ場所に埋め込んでゆく。 「あ、あぁ……」  幼い頃から慣らしてきた後孔は、ひくひくと収縮しながら春兎の指を受け入れた。  粘膜が絡みつく。けれど、どんなに慣らしても、春兎の大きさをのみ込むにことはまだできないだろう。猛り狂う楔が小さな孔を穿つ悦びを思い描きながらも、春兎はその衝動に耐えた。  今は指だけで我慢だ。  だが、小ぶりの玩具くらいなら、のみ込めるだろうと思った。柔軟な襞は求めるように細かく収縮を繰り返している。  ソファの下の箱を頭に思い浮かべる。郁の誕生日プレゼントに買ったオモチャを。 「あ、あぁ……、いい。そこ、もっと……」  身体はまだ華奢で、中心にある雄は可愛いまま。なのに、郁はもう、後ろで感じることを知っていた。春兎がそうさせたのだ。達することを知らない身体のまま、甘い苦しみに身もだえている。  何度か指を抜き差しすると、それまで力なく垂れていた郁のものが、硬く芯を持ち始めた。膨らんで、緩く勃ち上がってゆく。 「あ、あ……、僕の、おちんちん……、見て」  春兎の放埓を目にしたことで、何かが芽生えたのだろう。郁のものは確実に育ち、硬く張りつめていった。  淡い色の目が春兎の雄を捉える。大きさも色も、郁のものとは全く違う十八の男のそれを。 「春兎、兄さん……」  まるでそれを欲しがるように、らんらんと輝きを増す目で春兎のものを見つめる。  そうしながら、郁は自分の雄に手を伸ばして撫で始めた。後ろの指に感じて、小さな喘ぎを漏らし、たどたどしく擦っている。 「あ……、あぁ、気持ち、いい……。もっと……、もっと、奥まで擦って……」  すすり泣くように鼻を鳴らし、郁が腰を振る。もどかしげに、物足りないと訴えるように、兆した中心がゆらゆら揺れる。  春兎はふと、このまま簡単にイかせることが惜しくなった。  本当はまだ、あと少しの間、無垢の状態の郁を可愛がりたかったのだ。指で包んでも柔らかい郁の中心を舐め、昇りつめるさなかで、もどかしく身をよじり苦しむ様を眺めていたかった。 「ああ、春兎兄さん……、兄さんみたいに、したい。お願い。気持ちよく、させて……」  そう言うと、郁は突然、小さな唇に春兎のものを含んだ。細い指で春兎を支え、含み切れない塊をいっぱいに咥え込む。後ろの指を春兎が抜いても、郁はもどかしく腰を揺らしていた。夢中で春兎を舐め続ける。 「く……、は……っ」 「んふ……、ん……」  二人の呼吸が荒くなってゆく。ハァハァと激しく吐かれる息の音だけが、西日の差す室内に満ちていった。 「郁……っ」 「ん。むぐ……」 「は……、仕方ないな。誕生日まで、とっておくつもりだったけど……」  郁のために用意しているオモチャがある。後ろをもっと開かせて、いずれ春兎を受け入れさせるための、特別な玩具だ。  ソファの下を探り、箱からそれを取り出す。 「あ、何……?」 「プレゼントだよ。少し早いけど」  十一歳の誕生日の。 「すごくいいものだから」  純粋な歓びを浮かべた口元に、今度は春兎のほうから猛りをねじ込んだ。小さな尻を引き寄せ、襞の開き具合を確かめる。  勃ち上がって揺れている郁の小さな雄は、もういっぱいに膨らんで、少しでも刺激を与えれば、すぐにも弾けてしまいそうだ。  春兎は郁の手を後ろ手にまとめた。箱から解いたリボンで縛る。 「あ、春兎兄さん、いや……」 「いい子だから。少しだけ我慢しな」  もうすぐもっと気持ちよくしてやる。今までとは比べ物にならないくらい、たまらないほどよくしてやるから。  深い笑みを浮かべた春兎は、真新しい玩具を取り出すと、それを郁の後孔に押し当てた。 (俺の、郁……) 「あ……っ」  硬く冷たい無機物の質感に、郁が眉をひそめる。ゆっくり馴染ませ、奥まで差し込むと、苦悶の表情の中に愉悦が混じり始める。 「あ、あ……、これ、何……?」 「オモチャだよ。郁にぴったりの……。ほら……」  ブブブ……と低い振動音が響き、郁の中の玩具が動き出す。 「あ、あ、あ、あ……」  いや、と大きく首を振り、必死に逃れようともがく。その郁の腰を春兎はきつく掴んだ。自身の猛りを目の前に晒すと、郁は求めるようにそれにしゃぶりつく。 「ん、ん……」  小さな口の中で、凶器は熱と硬度を増していった。 「ん、ふ……。はる、と……。ん……っ!」 「ほら、郁のも大きくなってきたよ」 「あ……っ、ん、む……」  郁のそれは刺激を求めて苦しげに左右に揺れていた。弾けることもできずにわずかに雫を零す。  春兎は興奮した。 「イきたいだろ、郁……、ふ、、……」 「ん……、むぐ……」」  いっぱいに春兎を含んだまま、涙を流して郁が頷く。  小さな尻の奥では、細かい振動が絶え間なく裡襞を擦っている。ブブブ……ブ……と、繰り返される音に合わせ、郁の身体が何度も跳ねた。 「あぁあ、春兎兄さん……、はる……っ!」  春兎の名を呼びながら、郁は何度も腰を大きく回した。孔から伸びたコードが前後左右に揺れて、まるで小動物の尻尾のように軽やかに動き回る。  自由を奪われ、口に春兎の熱塊を含んだまま、郁が身をよじる。時おり唇を離し「お願い」と叫んで泣いた。 「イかせて……!」  内側からの刺激だけで達するには、時間がかかった。  それでも郁はイった。初めての精を、春兎を咥えたまま後ろの刺激だけで放ったのだ。 「あ、あ……、あぁ……」  ガクガクと震える細い身体。その尻からコードが伸びている。砕けそうに華奢な郁の肩が春兎の上に崩れる。春兎は息を詰め、その口の中に勢いよく放った。  小さな口から半透明の精液が溢れる。あたりには郁が初めて放った体液が点々と染みを作っていた。春兎の膝と服に、ソファを包む革や床にも、白いものが散っている。最初の精通にしては、思いのほか量が多かったなと春兎は思った。  力を失った郁の身体を、ゆっくり抱き上げる。うっとりとした郁の目が春兔を見上げる。 「すごかった……」 「うん」 「すごく、気持ちよくて……、でも、ちょっとだけ辛かった」 「そうか」  玩具を抜いてやると、小さく悲鳴を上げる。 「あ、抜かないで……」 「そうもいかない」  郁は目を伏せた。 「また、してくれる?」 「ああ。二人だけの時には、いつでも」  傾き始めた日差しが窓から差し込む。  母が買い物から戻る前に、軽く掃除と洗濯をしておこう。愛しい弟の髪に指を絡ませながら、春兎は満足の笑みを浮かべた。 *Season 2*  あれから十年、あんなに可愛かった郁も二十歳になった。春兎が育てたものは、一般的なサイズより立派なものに成長していた。いわゆる巨根というやつだ。  その大きな熱の塊が、今、春兎の尻に埋め込まれている。 「春兎兄さん、イきたい?」  ゆっくりと腰を使いながら、郁が耳元で尋ねる。  口に革の猿轡をかまされ、同じ革製の拘束具で両手を縛られた春兎は、苦悶に歪む顔でこくこくと頷いた。  深く貫かれ、背が弓のようにしなる。 「ん、ふ……」 「ああ、中すごくいい。もっと腰を振ってよ、兄さん」  イきたいんでしょ、と郁が笑う。  もどかしく張り詰めた場所が透明な蜜を滲ませる。達したいのに達せない。刺激が足りない。もっと強くしてほしい。さもなければ、指で。 (イかせてくれ……!) 「今日は、ここと」  けれど、郁の指が撫でるのは、張りつめて揺れる春兎の雄ではなかった。赤く色づいた胸の突起が、軽く摘ままれ弾かれる。くぐもった喘ぎが塞がれた口から零れ落ちた。 「ん、ふ……」 「相変わらず、感度がいいね。後ろがひくひくしてる。すごく、気持ちいい」  両方の飾りを不規則に刺激され、たまらず腰を揺らす。 「うん。春兎兄さん、さすがに覚えがいいね。僕に手ほどきをしただけのことはある」 「う、ぐ……」 「兄さんにもできるよね。今日は、ここと後ろだけでイくんだ。なかなかイけないだろうから、ゆっくり時間をかけて楽しもうね。父さんも母さんも、今日は帰ってこない。時間はたっぷりあるから」  土日は旅行。そう聞いた時から、郁は決めていたのだろう。  二人が出掛けてしまうと、まだ明るいうちから春兎の服を脱がせた。昔、春兎が郁に使ったさまざまな玩具で遊び、幼い頃、達することができない郁を苛んだやり方で、春兎を弄ぶ。 「気持ちいいでしょ。苦しくて、だけど、すごく気持ちいいはずだよ。これから、もっとよくなるからね」  ふっ、ふっと苦しい息を吐きながら、春兎は弱く首を振る。  甘い責め苦。  辛ければ辛いほど、強い愉悦が身体を満たす。教えたのは春兎で、郁はそれを返しているだけだ。 「さあ、ゆっくり楽しもうか」 「んふ……」  パンと肉を打つ音が、リビングの天井に響く。獣のように激しく腰を振る郁に、春兎の身体が揺さぶられ、古いソファが大きく軋む。肉のぶつかる音に、ギシギシと、使い込まれた家具の悲鳴が混じる。 「ん、ふ……、んん……っ」  喉の奥から声にならない声が押し出された。  膨らんだ中心が限界まで張り詰めて腹を打つ。それでも弾けることは許されない。足りない刺激と、後ろへの過ぎる快楽。その辛さが、甘く春兎の体内を蝕む。  毒のように。  蜜のように。 「んぐ。ん……」 「兄さん、どう? いいでしょ?」  ガクガクと春兎は頷く。  ずっとこんなふうに過ごしてきた。いつからか立場が逆転したけれど、それでも郁と二人、ずっと。  兄弟だけの、密やかな愉しみ。 「愛しているよ、春兎兄さん」  ああ、と春兎は思う。春兎も郁を愛している。 「たくさん、いいことしようね」  時間はたっぷりある。  誰もいないリビングで、罪と蜜を謳歌しよう。 【感想はコチラ(twitter)まで → 永倉ミキ@nagakuramiki】

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