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【大人の階段】遠崎秀也
「よ、呼んだ? おにいちゃん……?」
郁はリビングのソファに腰掛ける兄の春兎に、恐る恐る声をかけた。
優しげな笑みを浮かべた春兎は「こっちにおいで」と手招きする。
郁はそんな兄が怖かった。
春兎のこの顔はイジワルをするときの顔だから。
「郁。怖がらないでいいよ、楽しいことをしよう」
おずおずと近づいてきた郁を抱き寄せて、春兎はその小さな身体を膝の上に座らせた。
「お母さんもお父さんも、今夜は帰ってこないからね」
「またするの……? その……えっちな……こと」
「郁はしたくないのか?」
ニヤリと笑う兄に、逆らう術などまだ幼い郁は知らなかった。
また、あのえっちなことを、するんだ――。
すごく恥ずかしいけれど……とっても気持ちいい、あの行為。
郁は心臓がドキドキするのを感じていた。
怖いし、恥ずかしいけれど、でも。
大好きな”お兄ちゃん”とするえっちなことは、本当は――嫌じゃなかった。
「あっ……!」
シャツの中に温かい手が滑り込んでくる。滑らかな肌を楽しむように、何度も何度も何度も、ぺったんこの胸を撫でられた。
心臓がばくばくしているのに気づかれるかもしれない。郁はぎゅっと目を瞑って春兎の手の感触に耐えた。
「郁の身体は本当にきれいだね。つやつやで、柔らかくて、すごく興奮する」
「おに、い、ちゃっ……ぁっ!」
くるりと、小さなピンク色の乳首を撫でられて、変な声が出てしまった。
「だっ、だ、めっ……! そこ、ヘンだよぉ…!」
「乳首、気持ちいいのか?」
イジワルな春兎の指先が、小さな粒をきゅっとつまむ。
「ひゃぁんっ!」
「かわいい声だね。もっと聞かせて」
シャツを捲り上げられて、乳首をくりくり弄ばれて、捏ねられ引っ張られ、小さな粒はみるみるうちに真っ赤に染まっていった。少しずつぷっくりと熟れていく。
「やぁっ…! おにいちゃんっ…!だめだよぉッ……!」
「何がダメ? やめていいの?」
郁が反論できないのをわかっていて、春兎は言う。
乳首を弄ぶ手は止まらないままだ。
「おっぱい……ヘンになっちゃうからぁ……!」
「そうだね。男の子なのにおっぱいで感じちゃうなんて、郁はもうおかしくなっちゃってるかもね」
「やだぁ…! あっ、あっ…やぁああン!!」
両方の乳首をぎゅっと絞るように摘まみ上げられて、郁は悲鳴をあげた。びくん、びくん、と足が引き攣る。痛みの中に気持ちよさを感じてしまうなんて、おかしくなってしまったんだ。
郁は怖かった。
兄の手によって、どんどん身体が作り変えられてしまう。
「お兄ちゃんっ……」
涙を浮かべて春兎を見つめる。それが春兎の嗜虐心を煽ることになるということを、郁はまだ知らない。
「郁、ズボンとパンツ脱いでごらん。できるよね?」
「やっ……恥ずか、しい……!」
「じゃあ俺が脱がしてあげるよ」
言うなり、春兎は郁を押さえつけてズボンごと下着をずり下ろしてしまった。
「やだっ! み、見ないでっ!」
つるんとした可愛らしい双丘が露わになり、春兎は口角を上げる。透き通るような白い肌に、陶器のような滑らかな手触り。
「かわいいお尻だね。おもちみたいだ」
「やだやだぁっ! 恥ずかしいよ……!」
もっちりとした尻を揉みしだかれて、また変な気分になってくる。放置された乳首もまだ物足りない気がして、郁は全身を悶えさせた。
「あぁんっ……! おしり、そんなにしちゃ、ダメぇ…」
「郁は嫌がってばかりだな。もっと素直になった方が、楽しいよ?」
「だってだって…! こんなの、恥ずかしくって…イケナイことだから……」
郁は本能的に感じていた。血の繋がった兄弟でこんなこと、しちゃいけないんだと。だけど、抗えない。口では嫌がっているが、心は、兄の愛撫を求めている。
矛盾する気持ちがぐるぐると頭の中を巡って、郁の頭の中はいっぱいいっぱいになっていた。
「いけないことだなんて、誰が決めたの?」
そんな時、兄はいつも迷いなく答えてくれる。
「俺は郁が大好きだよ。郁は? 俺のこと、好き?」
「好、きっ……」
「なら、何も間違ったことじゃない。好きなもの同士、こうして愛し合うことは大切なことなんだよ」
温かい。兄の手が尻たぶを撫で、あろうことかそこに口づけを落としてきた。
チュッと音を立てて、何度もキスをされる。
「やっ……あっ…」
「好きだよ。郁――俺に、心も身体も全部委ねてくれる?」
嫌じゃ、ない。
むしろ――そうして欲しい。
「ぜんぶ……?」
「そう、郁の全部。俺にちょうだい」
うつ伏せていた郁が振り向くと、柔らかな笑みを浮かべる春兎と目があった。
心臓が痛い。ドキドキが止まらなくて、思わずすぐに目をそらしてしまう。
「――郁?」
「……い…いいよ……ぼくの、ぜんぶ……あげる」
ドキドキしながら、本当の気持ちを言う。うそのない言葉は春兎を喜ばせた。
ぎゅっと小さな身体を抱きしめられ、熱っぽい声で「ありがとう」と囁かれる。
郁も嬉しくなって、抱きつこうとした瞬間、目の前に不思議な物体を突きつけられた。
「じゃあ、今日はこれで一緒に遊ぼう?」
細長い、ツルツルしたピンク色の蛇みたいな、おもちゃ。
「……なぁに? これ」
春兎は首をかしげる郁を膝の上でうつ伏せにさせて、ぱちん、と柔らかい尻を叩く。
その刺激に驚いて、郁は「ひゃうんッ!」と声をあげた。
「お兄ちゃん!?」
「これはね、郁のお尻を気持ちよくさせるおもちゃだよ」
「おし、り……? どういうこと……?」
「大丈夫、俺に任せて。優しくしてあげるから」
春兎は背後に隠していたローションを手にとって、ぬちゅぬちゅと手で温め始めた。春兎の手から溢れたとろとろのローションが、郁の尻を濡らす。びっくりして、郁は尻を震わせた。
「お兄ちゃんっ! やだっ、怖いよっ……!」
「俺に全部くれるんだろ? 暴れると怪我するかもしれないぞ?」
ローションで濡れた春兎の指が、いきなり郁の尻を割り開いた。
「ああんっ……!」
ぬるぬるする感触が気持ち悪い。けれど、春兎はあろうことかその中心でひっそりと口を閉じている小さな小さな蕾に指を滑り込ませてきた。
「こわいっ…! こわいよ、お兄ちゃん……!!」
「大丈夫だよ。優しくするから」
春兎の指は細くて、痛くはなかった。けれど、異物が中に入ってくる違和感は耐えられそうにない。
郁はぎゅっと拳を握って、その違和感をやり過ごそうとした。
「そんなところに…ゆび、入れて……汚いよぉ…!」
「力を抜いて。ほぐさなきゃ入んないだろ? このオモチャ」
悪い笑みを浮かべて、春兎はさらに指を深く突き立てた。郁の未発達な身体を春兎の指が拓いていく。
「そのっ…オモチャ…! お尻に入れるの……!?」
「そうだよ。とっても気持ちいいから、郁も気にいると思うよ」
「やっ……! こわい…!」
気持ちいい、なんて言われても信じられなかった。お尻をこんな風に使うなんて、思いもよらなかった。いくら春兎が大丈夫と言っても、郁は怖くて怖くて仕方ない。
「やだっ……やめて、お願い、お兄ちゃん…!」
「でも、郁のココは嫌がってないよ?」
郁はハッとして、自分の股の間を見た。
そこには未成熟なピンクのペニスが硬くなり、上向いていた。
「ッ……!!」
「おちんちん、こんなにさせて。嫌じゃないんだろ?」
「これは……っ、ああっ……!?」
その瞬間、ジン、と熱い快感が郁の身体を駆け抜けた。春兎の指がおかしな場所をかすめたのだ。
「なに…!? いまの……!」
「気持ちいいところに当たったかな? 前立腺っていうんだよ。男の子が、感じる場所」
春兎の指は、執拗にそこを責めてきた。ぐりぐりと押されるたびに電流が流されたような感覚に陥る。気持ちいいどころじゃない。気持ちいいを通り越して、おかしくなってしまいそうだ。
「やっ、あっ! やだぁああっ、お兄ちゃんっ…!」
「よし、いい具合にほぐれたね」
涙をぽろぽろこぼす郁の尻から、ずるっと指が引き抜かれる。そして、間髪入れずににゅるりと冷たいものが入りこんできた。
見なくてもわかる。今入ってきたのは、さっき見せられたピンク色の蛇みたいなおもちゃだ。
「――ッッ!!」
冷たいおもちゃは春兎の指より少し太くて、郁は背中を仰け反らせる。
「すごい……どんどん飲み込んでいくよ。郁のお尻、すごくエッチだ」
「っ、は、ぁ……ああっ…! あ、やぁあっ……おなかの中、きもちわるいっ……!」
「じゃあ、こうしたらどうかな?」
ズルズルと入りこんでいたおもちゃが、ゆっくりと抜けていく。
異様な感触に、郁は唇を噛み締めた。
「んんぅッ……!」
最後まで抜いてくれるのかと思いきや、次の瞬間勢い良く、ぐっと奥までおもちゃが突き立てられてしまった。
「い、いやぁあああッ…!!」
あまりの衝撃に、郁は悲鳴を上げる。
だめ、怖い、やめて――!
おかしくなってしまう。そう思った時だった。
「やだぁああッ、あ、あっ、んぁあ――!!」
悲鳴を上げると同時に、ペニスの先端から熱くてネバネバする液体が飛び出したのだ。
初めは、お漏らしをしてしまったのかと思った。しかし、それとは感覚が違っていた。頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。
「やっ……はぁっ…あ……あうっ……!」
「――もしかして、郁……今のでイッちゃったの?」
イク――?
わからない。そんな言葉、知らない。
郁はクラクラする頭でそんなことを考えていた。
「はぁっ……はぁっ……な、に…? これ……?」
ようやく絞り出した言葉に、春兎は微笑む。
そして、ガクッと身体の力が抜けてしまった郁を抱きしめて囁いた。
「大人になった、ってことだよ」
指先で白く粘ついた粘液をすくいながら、春兎は愛おしそうにそれを眺める。
「おとな……?」
「後でちゃんと教えてあげる、今は、俺ともっと気持ちいいことしよう」
うっすらと開いたままの郁の唇に熱い口づけを与えてやった。
本当は、自分のモノで郁を大人にしてやりたかったけれど。
(――まあ、いいか)
こんなおもちゃよりも、もっとスゴイものがあることを教えてやるにはちょうどいいかもしれない。
春兎は郁に気取られないように笑みを浮かべながら、ぎゅっと細い体を抱きしめた。
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