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第24話(リントス)

 24(リントス)  1人の少年が、赤色の空間、円形の魔方陣、その中心で丸くなっている。ふと人の近づいてくる気配に目を開けた。  大きな男だ。  漆黒の髪、けれど、元自分がいた世界では馴染みのない灰色の目がこちらを見下ろしている。 「また、ここにいたのか」  そう言って、端正な顔に苦笑を浮かべた。  少年は一度目を閉じたものの、ゆっくりと目蓋を持ち上げ、身体を起こした。まだ覚醒していないのか、表情は浮かばない。  男は腰を落とし、少年と目線を合わせた。   「続いてで悪いが、今度はリール地方まで付いてきてくれるか?」  少年は言葉を発しないまま、小さく頷いた。男に促され、立ち上がる。手を引かれ、部屋を出た。  廊下を歩きながら、王はその20センチ以上下にある小さな頭を見下ろす。もう少年がこの国に呼び出されて、数ヶ月経つ。その中で少年が話した言葉はたった1つだった。   「小枝(さえ)」  とだけ、名乗ったきりだ。  この国――リントスに召喚されたこと、戦争が起きていること、救世主にあること、どれを説明しても、頷くきりだった。  茶色がかった髪を撫でる。  何か用事があるのかといった様子で、少年は顔を上げたが、男がただ笑っているのを見、俯いた。   「王、救世主様はいらっしゃいましたか?」  廊下を抜けた先に待ち構えていたのは、王の側近のサカンだった。  男――アーヴァーは頷き、小枝を彼に預けた。  華奢な背中が遠ざかっていく。足取りも頼りない子どもだ。そんな子どもに頼ってしまっている今の状況が情けなかった。  早く、終わらせなければ。  

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