徳永と星一は、２ヶ月間、欠かさず、週に一回食事をしていた。 しかし、あの日のように抱かれることもなく、ただ他愛のない話をして、また来週と別れるだけ。 それだけでも、星一は十分なはずなのに、体は変わらず徳永を求めてしまう。 男娼の仕事は副業でもあり、寂しさを埋める手段。 どの相手も徳永のような年格好の男だった。 ８月の夜。 徳永と会う約束をした前日、男娼の仕事が入ったので、いつものホテル街で待っていると、50歳くらいの男が来た。 初めは優しそうだと思っていたが、ホテルの部屋に着いた途端、豹変した。 ベッドに叩きつけられた星一は、着ているものを強引に剥ぎ取られ、あっという間に裸にされた。 ホテルで星一が気づいたときには、朝になっていた。 体の節々が痛い。 こんなに乱暴に扱われたのは久々だった。 (あのサド野郎……) 今日は徳永に会う日なのに、星一の体力はかなり消耗されてしまった。 何とか、アパートまで帰り、布団に倒れ込み、夕方まで横になったが、殴られた頬の傷はもちろん、体力もあまり回復しなかった。 夕方、いつも通り蕎麦屋で会うと、「大丈夫か？」と徳永は心配そうに声を掛けてきた。 「大丈夫です」 「……何かあったのか？」 「何も……」 星一が頑なに言おうとしないため、徳永はそれ以上追及はしなかった。 ただ、「今日は飲みに行こう」と初めて誘われた。 バーで飲んでいると、昨日の疲れもあったのか、星一はすぐに酒が回ってしまった。 そのまま酔いつぶれてしまったらしいが、心地よい揺れにふと目が覚める。 そこは、自分の背丈よりも少し高いところで、目の前に白髪混じりの頭が見えた。 星一はだんだん覚醒すると、徳永におぶわれていることに気づいた。 「徳永さん！？」 「おー起きたか」 「な、何で、俺おんぶされてるんですか？」 「君が酔いつぶれて、帰れないなんて言うからだよ」 「重たいでしょ？歩きますから、降ろしてください」 「曲がりなりにも軍人してたから、大丈夫」 そのまま徳永におんぶされ、アパートに着いた。 何とか降ろしてもらうも、酔いとダルさで上手く歩けない。 「やっぱり危ない」と徳永はひょいと星一を肩に担いで、部屋の中に入り、星一を布団の上に下ろした。 「徳永さん……すみません。俺、酔ってしまって……変なこと言ってませんでしたか？」 「変なことって？」 「その、俺の仕事のこととか……」 「あぁ、ストリップのことか？」 徳永の口からさらりと出た言葉に、星一は赤面する。 「もう一つの方は……？」 仕事の愚痴を散々、言ったのだろう。 男娼のことも言ったのだろう。 徳永の顔が憂いを帯びた顔になる。 「聞いたよ」 徳永の指が、星一の頬を撫でる。 労るような指先が、少しくすぐったい。 「俺……あなたに似た人とばかり寝てて……それで」 星一が言葉を続けようとすると、徳永は遮るように口づけをした。 「俺を、天城の中に刻みつけたら、君は自分を傷つけることを止めてくれるかい？」 「それって……」 徳永は、星一をそのまま布団に押し倒し、返事を聞かないまま、愛撫を始めた。