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パーフェクト・ワールド・ハルⅢ-3
「ミスコンねぇ。でも、嫌がってるんだろ、行人。他にいなかったの、やりたがってる子」
移動した食堂の片隅――とは言え、十分すぎるくらいには目立っていたが――で、茅野の力説を聞き終えた成瀬の第一声がそれだった。呆れた風な声にもめげず、二人を前にして茅野がここぞと主張を再開する。
「と言っても、だ。考えても見ろ、成瀬。今年のウチの入寮生で一番誰が可愛いかとなれば、榛名しかいないだろう」
「だから、それが全然嬉しくないんですって、俺は」
「だよな」
気の毒に、と言わんばかりの同意を頂いて、行人は俯いて唇をへの字に曲げた。それを一瞥して成瀬が茅野に向き直る。
「ところで、理由は本当にそれだけ?」
「それだけとは、どう言う意味だ」
「そのままの意味だけど。他にもいなくはないだろうにと思って。そろそろ期限も迫ってるはずなのに、何をそんなに行人に拘ってんのかな、と」
成瀬に見つめられて、根負けした茅野がガリガリと頭を掻いた。
「いや、……悪い話ではないぞ、本当に。ただ、今年のミスコンは、残念だがすでに結果が出たようなものだからな」
「出たような、って?」
「楓寮でほぼほぼ決まりだろう、と言うことだ。『ハルちゃん』がいるからな」
「ハルちゃん?」
成瀬が微かに眉を寄せた。
「あぁ、水城か。ハルちゃんって」
「なんでおまえはそう無関心なんだ」
すぐに思い至らなかった成瀬に、茅野が非難がましく口を尖らせている。
「おまえと言い向原と言い、もう少しくらい張り合いを持っても良いだろう。寮別対抗だぞ? 年に一度の祭りだぞ?」
「分かった、分かった。それで?」
「だから、繰り返すが、今回は楓寮が俄然有利なわけだ。だが寮長として俺は、櫻寮に勝たせたい。去年も一昨年もウチは入賞出来ていないからな」
「つまり、最下位だったってことな。詳しく知ってる? 行人。なんで茅野が頑張ってるか」
「ええ、と」
問いかけられて、行人は記憶を手繰った。茅野に熱心に何度も説明されてはいるが、意識的に聞き流して終わらせていたのだった。
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