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パーフェクト・ワールド・ハルⅢ-4
「あの、一位の寮から順に一年間、公共施設の利用優先権があるって。あと、寮の予算にイロが付くとか」
「そう。まぁ、と言っても、基本的には公共施設は事前予約制だし、その予約の日程が被ったときに、優先されるって言うだけではあるんだけどね。勿論、ミスコンだけの点数で決まるわけじゃないし」
「ちょっと待て、ちょっと待て。成瀬。語弊のありまくる説明をするな」
焦って制止した茅野が、「良いか」と行人の鼻先に指を突き付けた。
「確かに優先権だけではあるけどな、基本的に公共施設を使いたい時期はどこの寮も被るんだ。だから、優先権は絶対、必要。実際、去年も一昨年もウチは最下位でこれでもかと不利益を被っている」
「はぁ……」
「あと、ミスコン以外の、……いわゆるミニ運動会も得点には組み込まれるが、ミスコンの点数はそれの三倍近くあるんだ。つまり、実質的にミスコンで勝った寮が優勝することになる。分かったか?」
「はぁ」
「だから。俺はそれがそもそもどうかと思うんだけど。なんで寮別対抗なのに、たった一人の代表の肩に勝負の命運が乗っかるんだよ」
「文句があるなら、変えたら良かっただろ、会長」
「おまえら寮生委員会が生徒会を介入させないくせに良く言う……」
「ストップ。成瀬、ストップ。話を本筋に戻らせろ、いい加減。おまえ、そうやって有耶無耶にしようとしてないか」
脱線していく話に業を煮やしたように茅野が声を張り上げた。
「と言うわけでだな! 今年は楓寮が優勝候補であることに間違いはないと。そう言ったわけだ。そこで、俺は櫻寮を入賞させるために楓寮と手を結んだ」
「手を組んだ……」
呆れた声で繰り返した成瀬が、ちらりと行人に視線を送った。
「そこまでは分かったけど、だから、なんでそれで行人なわけ」
「それはだな。あっちのハルちゃんとウチのはるちゃんとで『ダブルはるちゃん』とデュオを組ませたら可愛くないかと、楓寮のヤツと盛り上がって」
「ダブルはるちゃん!?」
たまらず行人は叫んだ。ミスコンに出るだけでも冗談ではないが、今の茅野の言からすると、アイドルソングでも歌わされかねないノリだ。
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