31 / 1072

パーフェクト・ワールド・ハルⅣ-1

[4]  無駄に全面カラーで刷られた校内新聞の紙面に、ある意味で見慣れた顔が載っている。自分を可愛がってくれていた近所のお兄さんが、突如、きれいなお姉さんになって帰ってきたら、こんな気持ちになるのだろうか。神妙な顔つきでそれを閉じて、皓太は無言で机の脇に押しやった。 「ちょっと。俺もまだ見てないんだから。捨てないでよ、高藤」 「あー……、悪い。はい」 「みささぎ祭特別編集号。まだ正式には出てはないもんね。どれどれ」   寮生委員会用にと事前配布されたそれは、その名の通り「みささぎ祭」の為に制作された四面構成のものだ。四つの寮から選出されたミスみささぎコンテストの出場者の写真とインタビューが大きく掲載されている。寮五階の会議室に籠ってみささぎ祭の準備に追われていた皓太たちへの、茅野からの差し入れだ。開くなり荻原は相好を崩した。 「うわ、さっすがハルちゃん! すっごい美少女になってる」  荻原の視線の先で、水城春弥は楚々とした微笑を浮かべている。写真の中で水城が身に付けているのは、姉妹校・陵女学院の制服であるクラシカルなワンピースだ。ウイッグを被っているわけでも、おそらくメイクをしているわけでもない素顔なのだろうが、皓太の目にも恐ろしく似合って映る。――いや、それはべつに良いのだけれど。 「そのへんの女学院の子より可愛くない? こうやって見ると、ハルちゃんは本当にもとが良いんだね。普通、こんな風に素顔で勝負なんて出来ないでしょ」  疲れも吹き飛ぶとばかりに、荻原は頬を緩ませて熟読している。 「おまけにインタビューの内容も謙虚で可愛いし。同じ一年だけど、やっぱり外部生なだけあって初々しくてさぁ、それがまた良いよね。あー、なんかまた楓寮が羨ましくなってきたなぁ。へぇ、柊と葵は東雲に優海くんかぁ。確かにこの二人もどっちも可愛いもんね、と」  ぱらと一枚捲って、荻原が言葉を止めた。そして一言。

ともだちにシェアしよう!