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パーフェクト・ワールド・ハルⅣ-3

「そっか。だったら今度、茅野先輩に訊いてみようかな。ちょっと気になってきた。あ、榛名ちゃんも見る? 会長、好きでしょ?」 「見ない。絶対、見ない」  頑なに顔を上げない榛名に、荻原が例の紙面をひらめかせる。二次災害のごとく自分の視界にも入ってきて、皓太はそっと目を逸らした。居た堪れない。心境を表すならば、この一言に尽きる。  どこの夢の国の遊郭だよ。誰だよ、これの発案者。一笑に付したいのに出来ないのは、あるべきはずの違和感がないからだ。露骨な露出こそないが、花魁風に大きく抜かれた後ろ衿からは微かに鎖骨がのぞいている。結わえた髪をほどいたばかりのような濡髪と、眦に引いた紅にどこか挑発的な視線。どこから絞り出したのだと問いたい色気が写真からあふれ出ていて。持って生まれたものだけで勝負に出ている水城とは、確かに別ベクトルだ。 「そぉ? たぶん、想像してるよりは、ずっと綺麗に仕上がってるよ。そんなに心配しなくても。イロモノ枠にはしないって茅野先輩が言っていただけはある……」 「誰もそんな心配してねぇから!」  勢い叫んだ自分にショックを受けた顔で、榛名がゆるゆると息を吐き出した。その様子に、みささぎ祭の本番までこいつは乗り切れるのだろうかと他人事ながら心配になってきた。 「荻原。榛名、よりにもよって成瀬さんに押し付けたことに対しての罪悪感で押しつぶされそうらしいから、放っておいてやって」 「あ、そうなんだ。でも、そんなに気にしなくても。会長だって嫌だったらしないだろうし」  あっけらかんとした荻原の台詞に、皓太自身は全面同意だが、榛名が納得しないだろうことは身に染みている。この一週間、落ち込んだ様子を隠さない榛名に皓太が何度言い含めても、効果は得られなかったのだ。

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