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パーフェクト・ワールド・ハルⅣ-4
「榛名ちゃんも真面目と言うか律儀だねぇ。ミスコンは断ったって言うのに、迷惑かけたからって、雑用係を引き受けてくれてるんだもんね」
「いや、そう言うわけでもない、けど」
「寮長も怒ってないだろうに。と言うか、ほくほくなんじゃない? さっきもご機嫌だったじゃん。これを見てウチに投票する内部生も結構いそうだし。特に上級生は」
「投票……」
「そりゃ投票するに決まってるでしょ。一昨日、榛名ちゃんも延々と投票表紙を切断したでしょ? どうしたの。そんな顔して」
確かに何とも言い難い顔をしている。地獄かと思ったらば天国だった、かのような歓喜と悲観の入り混じったそれ。表現はし難いが、何を考えているのかは大まかに見当が付く。とどのつまり、この男は優劣が付くとなった以上、憧れの人に一位を取って欲しいが、ミスコンで優勝して欲しいかとなれば複雑なわけだ。
コンテストは新聞の発行後から内部生で先行した投票を行い、みささぎ祭当日には来場者からの票が入る。その総合計で勝敗が決することになるのだけれど。
――面倒くさい生き物だよな、本当。
溜息を押し隠して、皓太も作業を再開させた。実行委員たちが手作業で生成するパンフレットは、外部からの来場者に配布する分も含まれているため、かなりの数になる。
「それくらいにしておいてやって。悶々と悩んでいるうちに、また鍵でも失くされたらたまらないし」
「え? 榛名ちゃん、もう鍵失くしたの?」
大きくなった荻原の問いかけに、しばらくの後、榛名が口を開いた。多少は現実に戻ってたのか、パチン、パチン、と一定のリズムでホッチキスが動き出す。
「悪かったな。探したけど見つからなかったんだよ」
「まぁ、素直に申告するのは良いことだけどさ、二回目は気を付けないと。二回目からは鍵の再交付は有料だし、榛名ちゃんにじゃなくて、親に直接請求行くから、バレるよ? 二回も鍵失くしたって」
「マジ?」
「マジ。と言うか、まぁ、一年に二回も失くすヤツは滅多といないと思うけど、ちゃんと寮則にも載ってるから」
なんでこいつはこうも抜けているのだろう。自分はしっかりしているつもりか知らないが、――いや、確かにしっかりもしてはいるのだが、肝心なところで足元がふわふわしているように思えてならない。そもそもとして、ずっとポケットにでも入れておけばいい鍵を食堂に忘れるのかも分からないし、取りに戻っただけのはずのそこで茅野に捕まる要領の悪さも信じられない。挙句の果てに、すぐに取りに戻ってさえいればあったはずの鍵が無いとはどういうことだ。
ドアをガンガンと叩かれて、さすがに皓太も一緒に探しに戻ったが、どこにもない。有り得ない。
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