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パーフェクト・ワールド・ハルⅣ-5

「案外、うっかりなところあるんだね、榛名ちゃん。可愛いなぁ」 「だから。全く嬉しくねぇから、そう言うの。俺に言うな、水城にでも言ってろ」  ハルちゃんはハルちゃんで、榛名ちゃんは榛名ちゃんだからねぇ、と。全く堪えていない調子で応じて、荻原も新聞を畳む。閉じ終えたパンフレットの山が四分の三。この調子なら茅野の言う時間までには終わるだろうから、夜の点呼にも支障はないだろう。 「まぁ、でも良かったね。榛名ちゃん」 「え?」 「その調子じゃ出来なかったんじゃない? こんな写真も、インタビューも」  あ、結局、また話が戻った、と皓太は思った。ちらりと見遣った先で、榛名は眉間に皺を寄せて押し黙っている。無駄に力が入ったのか、ホッチキスの針がひしゃげてしまっているのが目に付いた。 「そう言う意味では、榛名ちゃんは本当に会長に可愛がられてるんだねぇ、ちょっと羨ましいかも」 「べつに」  不本意そうな擦れた声で榛名が応じた。失敗した針を引き抜いている横顔は、自嘲に揺れているようにも見える。 「俺だから、と言うよりかは、困ってたからだと思う。俺じゃなくても、きっと困ってる子がいたら代わってたって。成瀬さん、優しいから」 「優しい、ねぇ」 「なんだよ?」 「いや、べつに。でも、良かったことには変わりないだろ? もしおまえが受けてたら、少なくともこれから先の一年間はマスコット扱いだっただろうし」  顔を上げた榛名に首を傾げられて、皓太も内心で首を傾げた。

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