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パーフェクト・ワールド・ハルⅤ-3

「じゃあ、あとで、もう一度来ますね」 「あ、皓太」  ドアノブを掴んだ皓太を呼び止めた篠原が、笑って隣の椅子を引く。 「ちょっと休んでけよ。いい加減、書類の処理に飽きてきた」  その顔に、まだ話したいことがあるのかなと感づいて皓太は逡巡した。榛名と荻原は寮の会議室でみささぎ祭の作業に追われている。――が、少しくらいは大丈夫だろう。生徒会室で会長の帰りを待っていたと言えばなんとでもなる。そう決めて、室内の中央に足を向けた。 「飽きないでくださいよ、それ、まだ半分以上あるでしょう」  山となっている書類の束から出来得る限り視線を逸らして、椅子に腰かける。小言に肩を竦めて、篠原が矛先を変えた。 「大丈夫だって。あいつらが戻ってくるまでには終わらせるし。それより、どうだ? 初めてのみささぎ祭は。中等部とはまた雰囲気違うだろ」 「そうですね。なんと言うか……派手ですね、やっぱり。規模も内容も」 「ミスコンが、だろ?」  まぁ、そうですね、としか言えないが、その通りだ。一年生は楽し気な雰囲気に呑まれているが、それだけでは済まないものもある。 「ウチの寮は、まぁ、水城がいたから順当だったけど、櫻、大変だったろ? 成瀬のわがままで」 「いや、まぁ、――助かったのも事実なんで、あれですけど。ちょっと、榛名は気の毒かな。結構、気にしてたから」 「だろうな。安心しろ、向原はそれを通り越して、地味にずっと機嫌悪いから」 「なにが安心……。と言うか、榛名のそれと向原さんのそれ、全く別物じゃないですか」 「じゃあ、柏木は? あいつも切れてたろ、結構」 「柏木先輩?」  生真面目に寮長のケツを叩いている神経質な横顔が脳裏に浮かぶ。最近ピリピリしているとは思ったが、準備に忙しいからだと判じていたのだが、違ったのだろうか。

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