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パーフェクト・ワールド・ハルⅤ-4

「あれ? おまえ、知らなかったっけ。柏木、あんまり態度には出さないもんな。あいつ、三年の間じゃ、成瀬好きで有名なんだよ」 「そうなんですか」 「そう、そう。中等部の一年のときな、あいつら同室だったんだよ。それで、そのころの柏木って今よりもずっと線が細くて、女の子みたいでさ。上とか同級のヤツによく絡まれてたんだけど、それを成瀬がなにくれと庇ってやってて。それ以来」  その図は、皓太には想像に容易かった。いかにもあの人が気負うわけでもなく、さも自然とやりそうなことだ。 「今のおまえと榛名みたいなものかもな」 「べつに、俺は、そんな面倒を看てるつもりはないですよ」 「たぶん、あいつもそう言うと思うけど。そこらへん、似てるよな、おまえら」  皓太は曖昧に笑って濁した。昔は似ていると言われれば純粋に嬉しかったが、最近は感じるところが少し変わってきた。口にすれば、篠原に反抗期の弟かと一笑に付されるレベルの葛藤なのだろうけれど。 「ところで、おまえ、あいつとクラス一緒なんだよな」 「あいつ、って水城ですか?」  世間話のついでの様に切り替わった話だったが、ここから先が本題なのかもしれない。皓太は背筋を伸ばしたが、篠原は変わらない調子で話を続けた。 「ちなみにウチの寮は九割方、水城に懐柔されてるなぁ。教室もそんな感じか?」 「そう、ですね」  告げ口のようだなと思いながらも、皓太は正直に口を開いた。

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