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パーフェクト・ワールド・ハルⅤ-5

「まぁ、べつに何をしたってわけでもないんですけど。自分が一番でないと気が済まない性格が滲み出ていると言うか。……語弊があるかもしれないですけど、あの笑顔でクラス内のアルファを操ろうとしてるんじゃないかって、思うときがありますね、正直」 「安心しろ」  数分前と同じ台詞を、篠原が苦笑気味に吐いた。 「俺も、そう思ってる」  自分の思い違いでも、考え過ぎでもない、と。突き付けられたようで気分が沈む。何も起こらなければ、それで良いと皓太は思っている。本当だ。一番に目立ちたいと思うことも、悪いことではない。周囲をきちんと気遣えるのならば。――ただ。 「成瀬さんは」 「あいつも向原も静観だな。今のところは」  まぁ、でも、と。篠原が嫌そうに天を仰いだ。 「それもミスコンの結果次第かもしれねぇけどな」 「どういう意味ですか?」  ミスコンの結果次第。なんとはなしに香る不穏さに皓太は眉をひそめた。この人の、こう言う勘と言うかなんと言うか。当たるから嫌なんだよ。野生の勘と揶揄していたのは向原だったが、言い得て妙だと思う。 「そうだな。いや、――それはまぁ、さておいて。さっきはわがままとは言ったけど、あいつ、榛名を庇ってやったんだろ?」 「まぁ、そうでしょうね」 「あいつが一年の時、その話があいつに向いてた時もあったんだけど、強硬に反対して押し通したんだよ。だから、正直、あいつが自分からやると言うとは思ってなかったんだけど」  言い淀んた篠原が、ちらりと窺うように皓太に視線を送った。 「つまるところ、分かりやすく可愛がってるわけだ、成瀬は榛名のこと」 「それも今更だとは思いますけどね」 「いや、まぁ、そうだけど。ただ、最近は妙な噂が良く立つだろ?」  噂と言われて一体どれのことだと悩んでしまうくらいには、この一カ月弱の間に、陵学園は大小さまざまな噂で満ち溢れるようになった。けれど、今ここで篠原が挙げるとすれば、これなのだろう。皓太は眉間に皺を寄せたまま吐き出した。

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